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 Diary 2001・5月9日(WED.)

オイシン

 オパールのガンスイことオイシンのネット上での人気は相変わらず高騰しているようだ。ほんとうはオイシンのことなんてフウタラヌルクて書きたくないのだが、「もっとオイシンさんの事が知りたい!」というメールが山のように押し寄せるものだから、私としても定期的に書かざるを得ない。

 なぜオイシンがそこまで人気があるのか、私にはさっぱり分からない。確かに私とてオパールでオイシンを使っているという関係上、そこまで本当のことを書くわけにはいかず、かなり良く描いているのは事実だ。それでも十分にアホだと思うのだが、もしかしてこの適度な阿呆さ加減が人気の秘密なのかもしれない。絶妙なアホ具合が、人々の優越感・母性本能・嗜虐心などを刺激するのだ。実際、実物をみると大抵の人は失望して帰っていく。リアルオイシンのガンスイぶりは、人々の心を萎えさせるのに十分だからだ。我々も必死に気力を振り絞ってオイシンにつきあっている。これが、オパールでオイシンひとりがいつも元気である理由である。

 では、気力を振り絞って、オイシンとの会話を以下に記そう。私とショウヘイくんがジャック・ザ・リッパーの話をしていると、オイシンが「それ誰ですか?」と会話に加わってきた。まあ、「ジャック・ザ・リッパー」と聞いて、それが「切り裂きジャック」のことだとすぐにピンとこない人は、案外いるだろう。そこでオイシンに「日本語に訳してみな。たぶんオイシンも知っている人物だから」と言う。

「日本語に訳すんですか? ええと…………………。」

「…ほら、ジャックといえば?」

「ええー、豆の木。」

 まあ、これは予想された答えだ。ここでショウヘイくんが代わって質問する。

「そうじゃなくて、なんとかジャック、だよ。****ジャック。ヒントは犯罪者。」

「ううううん…あ、よど号ハイジャック!」

 これは意表をつかれた。にしても下らないボケだ。いいかげんにしろと思いながらオイシンの方を睨むと、真剣な目をしていてふざけている様子がなかったので、私は恐くなって目をそらしてしまった。オイシン恐るべし。

 ついでにもうひとつ。

 私が雑誌「諸君!」を読んでいると、オイシンが「その雑誌、店主が読むくらいだからきっとナショナリストの雑誌なんでしょうねえ〜。」と話し掛けてきた。「ナショナリストの雑誌というか、まあそうなんだけど、文藝春秋社が出している論壇誌だからね。保守派の雑誌だな。」

「へええ! 文藝春秋って保守派だったんですか!!」

「そうだよ。保守の文藝春秋と革新の朝日、おおざっぱだけどこの二つが大きく対立しているのが言論界の見取り図。オイシンもこれから雑誌とか読むんだったら、これぐらいは知っておかないと、何が書いてあるのかさえ分からないよ。」

 私はここまでの会話は普通にこなした。オイシンのように学生時代に活字をまったく読まなかった人間が、雑誌の色分けとかを知っていなくても、別に不思議ではないからだ。しかし、次ぎにオイシンの発した一言で、私は衝撃のあまり「諸君!」を手から落としてしまった。

「ボクねえ、就職活動で『文藝春秋』受けたんですよ〜。」

 な、なにいいいい!! 呆然と立ち尽くす私に、オイシンは容赦なく次ぎの攻撃を加える。

「筆記試験は通ったんですけどね〜、面接で落とされちゃいました。でも、そうかあ、文藝春秋って保守派なのかあ、それじゃあボクのようなリベラルな人間は落とされて当然ですねえ〜。」

 ‥‥恐いです。

小川顕太郎 Original:2001-May-10;