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 Diary 2001・7月20日(FRI.)

濡れた壺

 みなみ会館に「小沼勝レトロスペクティブ」中の 1 本、『濡れた壺』(1976 年)を観に行く。小沼勝が監督した映画は、カルト映画として有名な『夢野久作の少女地獄』(1977 年)を、その昔に観た事があったけれども、さほど感銘を受けなかった。だからいざ出かけようとした瞬間に、バケツをひっくり返したような雨が降ってきた時には、行くのを辞めようと真剣に考えたが、四方田犬彦が「これだけは観ておきたい!」と確か何かの著書でこの作品を勧めていたのを思い出し、気力を振り絞って、豪雨の中を出かけた。

 そこまでして観た感想は、「まあまあかな」。ただ、10 年程前に『夢野久作の少女地獄』を観た時には分からなかった小沼勝のいわゆる「作家性」が、今回は分かり、そこは面白かった。なんというか、イメージで撮る人なんですね。多数の裸のマネキン人形にとりまかれて悶える谷ナオミとか、黒の紋付で靖国神社の鳥居をくぐる老人達とか、刑務所の壁に沿ってズラリと並ぶ黒服・サングラスの男達とか。イメージとして楽しめるものが多い。特別出演(?)の田中小実昌もおかしかった。なんとなく、『愛のコリーダ』の殿山泰司を思い出しました。

 今回の特集上映のパンフレットを買い、帰り道に読んでいると、気になる事が書いてあった。色んな執筆者が小沼勝の傑作として、『花芯の刺青 熟れた壺』をあげているのだ。もしかして四方田が勧めていたのはこっちの方だったのでは…。考えれば考える程、その確信は深まっていく。確かに『濡れた壺』は、わざわざ「これだけは観ておきたい!」という程の作品ではあるまい。しまった! …でも、まあ、いいや。こういう勘違いでもしなければ、一生観ない作品だったろうし、そこそこ楽しめたんだから…。

『濡れた壺』ではなく『熟れた壺』だったと、ほとんど確信していたものの、家に帰って四方田の著書を探し、一応確かめる。すると、違う! 四方田が勧めていたのは、『貴婦人縛り壺』だった!!! 『濡れた壺』とか『熟れた壺』とか『縛り壺』とか、ややこしいっちゅうねん! これだからポルノ映画は、困るよ。いや、ちゃんと確かめなかった私が悪いんですけどー。

 それにしても、『貴婦人縛り壺』、観たいです。

小川顕太郎 Original:2001-Jul-22;