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Movie Review 1999・9月29日(WED.)

ラン・ローラ・ラン

『矢沢永吉 RUN & RUN』とは何の関係もない。冗談はさておいてネタばらします。ルールは簡単。20 分以内に 10 万マルクを工面して恋人が待つ電話ボックスに届けること。さっさとテンポよくルールを説明、「走り」が始まる。ほぼリアルタイムに 20 分走りまくり、なんだかんだでジ・エンド。あれれれれ、上映時間はまだまだあるはずだと思っていたら、なんとリプレイ。そう、同じゲームが 3 回繰り返されるのだ。

 テレヴィゲームというものがエンタテインメントの一分野を占めるようになり、そのおもしろさをなんとか映画に取り込もうと努力する傾向があると思うのだけれど、そういう傾向の現時点での頂点を成す映画だ。って『ニルヴァーナ』は見逃してるんだけど。

 例が悪いが『ストリートファイター』という映画などは、単にゲームのキャラクターを借りてきただけでゲームの本質的なおもしろさを生かそうという野心のカケラもない映画だったし(別のおもしろさはあるけど)、やっとこさ『マトリックス』で、インタラクティヴ・ゲームにありがちな展開、最後までパワーゲージを入れるかどうか悩んだと漏れ聞くカンフー特訓プログラムのシーンなどでゲーム的なおもしろさが存分に映画に生かされていたが、『ラン・ローラ・ラン』の場合は同一設定で 3 回同じことを繰り返すことでゲーム風味映画の新しい地平を開いた。おおげさかも知れないけれど、映画の寿命を伸ばしたと思う。

 同じ設定で出発し、ある決断、結果によって別のストーリーが展開していく、というのは岩井俊二の『打ち上げ花火 下から見るか? 横から見るか?』、最近ではグウェネス・パルトロウ主演の『スライディング・ドア』などがあり、映画の時間の流れをカク乱する実験ってのはもっと古い映画でも試みられてきたと思うのだけど、3 回リプレイというのが新しい。単純にそれぞれのプレイの差がおもしろいし、実験的なれどバカでもわかるのが良いぢゃないですか。

 全編テクノが流れ、アニメ、ヴィデオ、フィルム、スティルなど様々な素材・技法が駆使される映像・編集のタッチは「MTV 的」という次元を越えて「VJ 的」。ローラがきゃあと叫べばガラスが砕け散る、というのは大友克洋? それとも『ブリキの太鼓』? 「最後は愛が勝つんだよなあ」というねぼけた結論はどうでもよくて、ひたすら音と映像に身をまかせて気持ちがいい。大音量・大画面での上映希望。

BABA Original: 1999-Sep-29;

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