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 Movie Review 2005年6月22日(Wed.)

交渉人 真下正義

 He's "back up"? ババーン!

 東京・地下鉄、テスト中の新型車両が、何者かにコントロールを奪われ暴走を始めます。「真下さん、一緒に地下鉄走らせようよ」というわけで、警視庁初の「交渉人」=ユースケ・サンタマリアと姿なき犯人の、丁々発止の戦いが始まる! ジャーン! …となれば、トンチ合戦がくり広げられるや? と期待も高まろうというもの、しかしこれが、丸出ダメ夫でありました。

 以降、ネタバレありでございます。

 物語は人気テレヴィシリーズ(+映画版)『踊る大捜査線』世界で展開します。『踊る大捜査線』世界においては、大惨事が起こるわけがないことを観客・私は知っておりますので、スリルもサスペンスも生まれようがないのでございます。

 映画の最初の方で、犯人は人の命を奪うことをためらわない人間の屑であることを示さなければならないし、非情な爆弾の威力を見せておかなければならない、と思うのですけど、そこんところが不十分なので、さっぱり盛り上がらないのですね。

 また、ユースケ・サンタマリアはユキノさんとのデートに間に合うか? というサスペンスも設定されますが、ユースケがすんなり事件を解決したとしても、記者会見やら報告書作成やらに忙殺され、コンサートに駆けつけるのは絶対に無理! 謎です。

 地下鉄の暴走→コンサート会場での爆弾騒ぎと、なかなかに結構な大事件、しかし捜査の指揮をユースケ・サンタマリアがとり続けるのも謎です。いかにムロイさんが「責任はすべて取る!」とおっしゃっても、一介の交渉人風情が、捜査の全権を握るがごとき暴挙が許されてよいのでしょうか? と、いうか、きわめて少人数で大事件の捜査にあたる、しかもそれはパソコンでの検索が主たる捜査、あるいは寺島進が勘に頼り、計画性なくウロウロする…。

 警察が警察なら、犯人も犯人です。『ジャガーノート』『オデッサ・ファイル』『愛と哀しみのボレロ』など映画タイトルに言及し、映画好きはニンマリ、私はゲンナリ、しかるにネタ元のひとつ、ヒッチコックの『暗殺者の家』、ヒッチコック自身によるリメイク『知りすぎていた男』に言及しないのは、お前、なめてんのちゃうか? という感じでございますね。

 さらに、地下鉄コントロールセンターのモニターから新型車両が消えた! わーわー大騒ぎ、それは、秘密の支線に入ったのだ、うーむ、これでは見つけられない! …って、新型車両が消えた周辺の隠し線を探せばよいのでは?

 さらにさらに新型車両はどうやら無人で、携帯電話で操られているらしいのですが、地下でも電波が届くのか? 秘密の支線にもアンテナが設置されているのか…?

 謎が謎を呼び、穴が穴を広げ、何が何やらさっぱりわからず、東京の警察はアホばっかりかー!? 私は呆然と、いかりや長介の不在に思い至る。『踊る大捜査線』世界の警察は、これまでもふざけたものでしたが、ただ一人、いかりや長介が昔気質、経験豊かで人情深い「刑事のあるべき姿」として存在し、そこにコントラストが生まれていたわけですけど、いかりや長介がいなくなってみれば、『踊る大捜査線』の警察には、ただ一人としてまともな人間がおらず、のっぺりとした面白みのないものになってしまった…、と一人ごちました。

 というわけで『容疑者 室井慎次』もなかなかに楽しみな私なのでした。ユースケ・サンタマリアと寺島進のキャラを取りだして、『踊る大捜査線』世界から離れて別の映画を作っていただきたいな、って感じでオススメです。

(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Jun-21;