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 Movie Review 2005年7月29日(Fri.)

ニライカナイからの手紙

 すりきれた手紙をにぎりしめ、少女は大人になる。ババーン! 『花とアリス』『星になった少年』で好演、蒼井優主演でおくる、郵政民営化しちゃうと離島の郵便局なんかつぶれるんとちゃう? それは日本人が古来よりつちかってきた村落共同体、相互扶助の精神を殺すことになりはしないか? と訴える政治映画でございます。

 Eメールでは伝達不可能な、手書きの手紙でしか伝えられない思いがあるのですよ、とか、郵便局同士の美しい連帯・友情が「思いを伝えるお手伝い」を支えているのですよ…みたいなメッセージもあり、それはそれで結構なのですが、今日、郵政にかけられている攻撃は、アメリカ帝国いいなり小泉反動親米ポチ内閣が、国民の虎の子100兆円を超える簡保保険の資金を、米国ファンド(ハゲタカ・ファンド)に貢ぐことが本質、郵政民営化に反対するなら、そこを徹底的に突かなあかんのであって、地方・離島の郵便局の気色よさを描くことがいかなる政治的インパクトを持つのか? 的はずれではないか! 小泉首相、許さん! …って、そういう映画ではないですね。

 そんなことより、蒼井優は沖縄・竹富村の郵便局長の祖父と二人暮らし、父はとおに亡くなり、母は難病わずらって、蒼井優7歳の頃より離ればなれで東京の病院で入院しており、毎年、母からの手紙が誕生日に届く。蒼井優は、高校を卒業したら上京し、東京の母を捜そうとの想いを抱くのでした…というお話。

 この母親(南果歩)が実は…というのは中盤でおおむね読めてしまう、ずぶずぶの母恋しメロドラマ、劇場内各所でわきおこるすすり泣きを聴きつつ、私の心はきんきんの氷よりハードボイルドに冷え切っていたのでした。というのも、7歳ではなればなれになれば母恋し感情わきおこって当然? みたいな感じで、冒頭の「お母さんとの楽しく美しい思い出」がステレオタイプにもほどがある類型的な描写、母と子の別れといえば『母をたずねて三千里』第一回、少年マルコが母をつれさる船を懸命に追いかける場面が思い出され……思い出しただけで目頭が熱くなるわけで、母の思い出は、美しいだけではダメ、なまなましさ、痛みをともなわなければならないのだ。よくわかりませんが。

 しかし、東京砂漠で怒鳴られながらカメラマン修行する蒼井優のガンバリぶりがすこぶる気色よく、ステレオタイプ的メロドラマをぶち破るのはやはり女優の力なのですね、と一人ごちました。

 政治プロバガンダ、母恋しメロドラマ、才能ある女優さん、と往年のハリウッド映画のように三拍子そろい、蒼井優のひさかたの帰郷を、竹富村の衆があれこれ物品を持ち寄るシーン、エキストラさんのド素人ぶり全開で腰が砕ける快感あり、となかなか微妙な出来上がり、ともかく蒼井優ちゃんよい感じ! ですのでオススメです。

☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Jul-28;