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 Movie Review 2005年2月2日(Wed.)

Ray/レイ

 レイ・チャールズ――音楽、恋、そして人生。彼は、生きること全てにおいて〈天才〉だった。ババーン! オーイエー。昨2004年亡くなったレイ・チャールズの伝記映画です。

 ネタバレですが映画の冒頭、青年レイ・チャールズ・ロビンソンは、故郷ジョージア州を長距離バスで旅立ち、シアトルに到着。街頭で、トランペットを吹く青年と意気投合します。その青年の名は…「クインシー・ジョーンズ」! …掴みはバッチリ、傑作であることが約束されたオープニングである、と申せましょう。

 監督/製作/脚本はテイラー・ハックフォード、『愛と青春の旅立ち』で大ヒットを飛ばすも、近年は『黙秘』『ディアボロス/悪魔の扉』『プルーフ・オブ・ライフ』とシャキッとしない作品連発。しかし今回は上出来の部類で、実はテイラー監督15年来、レイ・チャールズ伝記映画の企画を温めていたそうで、当初大手スタジオは興味を示さなかったので、インディーズとして製作開始されたそうです。

 生前のレイ・チャールズからもじっくり話を聞き、脚本チェックも本人から受けたとのこと、テイラー監督の気合いの入り方も半端でなく、レイ・チャールズの人となり、その音楽を過不足なく描ききった! かも。

 実在ミュージシャンを描くなら、まずその[音楽]が中心に据えられるべきである、というのは『五線譜のラブレター』(コール・ポーター半生を描く。アーウィン・ウィンクラー監督)と同じ戦略、では音楽演奏シーンをただ流せばよいかというとそれでは退屈、この『Ray/レイ』は、作品をつらぬく心棒として「レイ・チャールズのトラウマと、その克服」があり、その心棒をめぐる時々の状況に即して、名曲の数々がどのように生まれたか? 一曲一曲に過去の記憶がフラッシュバックされ、多面的・深く考察されていてバッチグーでございます。

 また、「音楽の天才なので許されているけれども、一ヶの人間としてどうなのか?」みたいな、レイ・チャールズの負の面も暴かれてる、と感じました。映画の中のレイ・チャールズは、盲人であるがためギャラを誤魔化されそうになったり何かと欺かれがちで、常に他人に「真実を言ってくれ」と求め続けます。その態度は映画にも反映し、レイ・チャールズにとっては思い出すのが嫌なこと、隠しておきたいことまで遠慮なく・呵責なく描かれおり、一ヶの希有な人物像が描出された…と私は茫然と感動しました。

 それはともかく、『Ray/レイ』は一ヶの[ミュージシャン論/ポップ音楽史]にもなっており、[ブルース・ムーヴィー・プロジェクト〜テイラー・ハックフォード監督による番外編]と言ってもよい感じでございますね。

[ブルース・ムーヴィー・プロジェクト]の『ソウル・オブ・マン』(ヴィム・ヴェンダース監督)では、伝説のブルースマン演奏シーンが「捏造(でつぞう)」されておりましたが、この『Ray/レイ』でも、レイ・チャールズの演奏が見事に再現され、それなりの処理(モノクロにするとか?)を施せば「当時のお宝映像」に見せかけることも充分可能でしょう。アメリカの「捏造能力」の高さに私は寒気を覚えたのでした。

 そんなことはどうでもよくて現在/過去を縦横に行き来する編集の切れ味爽快! それもそのはず編集は、名手中の名手ポール・ハーシュ。『ファントム・オブ・パラダイス』などブライアン・デ・パルマ監督の多くの作品、その他『フェリスはある朝突然に』『フットルース』『フォーリング・ダウン』など、編集がカッコいい作品多数。私が名前をおぼえている数少ない編集マン、今回も最高です。

 と、思わずベタ誉めしてしまいましたが、不満も少々ありまして、結末がいささかあっさりしてやしないか? と。

 レイ・チャールズは、「永久追放」宣告されていたジョージア州から、「復権」を認められ、『わが心のジョージア』はジョージア州歌になって、州議会議員全員がスタンディング・オベーション…というのがラストシーン。ベタで感動的ですけど、取ってつけたみたいに思いました。

 オープニング、長距離バス車内で「黒人席(Colored)」がバーン! と映し出されるのと呼応して、レイ・チャールズは末永く黒人解放、盲人地位向上のため奮闘しましたとさ、みたいなエンディングですが、そんな言葉による総括は不要ではないでしょうか?

 映画のオープニングでは同時に、レイ・チャールズは差別をひらりとかわす抜け目のなさ=[トンチ]を身につけた黒人・盲人であることが描かれていたわけで、「黒人」「盲人」差別の問題は、レイ・チャールズを語る上で欠かせないけれど二次的・副次的なものである、という立場の映画ではなかったのか、と私は思うわけです。

 ラストは、例えば[本物]のレイ・チャールズの演奏シーンをたっぷり見せて欲しかった…と一人ごちました。

 とはいえ、2時間32分の長丁場、「もっともっと見せてくれ!」と言いたいくらいジェイミー・フォックスが凄すぎる! 100年・200年後には「レイ・チャールズ:青年時代はジェイミー・フォックスと名乗り、俳優としても活躍した。『コラテラル』など」と誤解されてもおかしくないくらいです。…ってよくわかりませんが、「珠玉」の演奏再現シーンは必見、さてサントラCDも買うか! って感じでバチグンのオススメ。

☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA
Original: 2005-Feb-2;