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 Movie Review 2004・3月9日(Tue.)

ゴシカ

『リング』『呪怨』怨念の D.N.A.は世界で増殖する! ババババーン!

 …とは、素っ頓狂な宣伝コピーですが、さては日本ホラーの面白さに度肝を抜かれて『リング』がアメリカでリメイクされたみたいな時流に乗っかった作品かー? との誤解を招き、日本ホラー好き観客が続々劇場につめかけ『ゴシカ』鑑賞後、「一体全体、どこに『リング』『呪怨』怨念の D.N.A.(何?)が認められるか!?」と、大騒ぎ、暴動がおきやしないかと冷や冷やしながら鑑賞したのですが、大丈夫でした。

 そもそもこの『ゴシカ』、ダーク・キャッスル・エンターテインメントの『TATARI』『ゴーストシップ』『13 ゴースト』に継ぐ最新作です。

 ではダーク・キャッスル・エンターテインメントとは何か? 『マトリックス』など、話をひねらないと気が済まない大物プロデューサー=ジョエル・シルヴァーと、ホラーやサスペンスは大好きなんだけど自分で監督したらさっぱり面白くなかった!(『ホワット・ライズ・ビニース』)というロバート・ゼメキス、そういうよくわからない組み合わせで立ち上がったホラー専門プロダクションですが、ウィリアム・キャッスルをリスペクトし、ウィリアム・キャッスル風ホラーを作ろうとの気概に燃えておられるようです。

 では、ウィリアム・キャッスルとは何者かといえば、私、昔テレヴィで 1、2 本見た程度ですのでよく知らないので、詳しくは『興行師たちの映画史(柳下毅一郎著)、あるいはウィリアム・キャッスルをネタにしたとおぼしきフィクション『フリッカー、あるいは映画の魔(セオドア・ローザック著)をお読みいただくとして、ホラー作品に色々ギミックを仕掛けた監督/興行師だそうです。

 どういうギミックかというと、その辺は愉快な傑作『マチネー 土曜の午後はキッスで始まる』(ジョー・ダンテ監督)をご覧いただくとして。

 どうやらウィリアム・キャッスルは、扇情的な宣伝で観客を半ばだまくらかして劇場に集めた興行師の一人ですから、この『ゴシカ』の「『リング』『呪怨』怨念の D.N.A.…」云々、ワケわからん宣伝文句は、ウィリアム・キャッスルの精神に忠実である、と言えましょう。ってよく知りません。

 ちなみにアメリカ版ポスターの宣伝文句は“BECAUSE SOMEONE IS DEAD, DOESN'T MEAN THEY'RE GONE.”=「誰かが死んでも、逝ってよしとは限らない」(勘違意訳)

 それはともかく、『ゴシカ』は、ウィリアム・キャッスル、あるいはアルフレッド・ヒッチコック『白い恐怖』など、1940 〜 50 年代くらいの、ニューロティックかつサイコなサスペンスの雰囲気で、とにかく観客を飽きさず先の展開を読ませないため脚本をヒネリまくってますんで、先入観なし、事前の予備知識一切なしでの鑑賞をオススメします。

 以下、ネタバレ含みます。

 で、いきなり最大のネタバレをしてしまいますが、ハル・ベリーが出てる!! ペネロペ・クルスも出てるし!! という超意外な豪華キャスト、監督は『憎しみ』『クリムゾン・リバー』のマチュー・カソヴィッツ!? と私は呆然と驚愕し…って予備知識なしにもほどがありますね。

 で、前半のローラーコースター的急展開がなかなか気持ちよいのでした。

 女性刑務所精神科病院(?)につとめる合理主義・唯物論者の女医ハル・ベリーが、ある夜、幽霊を見てしまって少々精神に異常を来し、気がつくと自分自身が刑務所病院に入れられてしまっている、どうやら最愛の夫を殺したらしい、ババーン! …という発端で、ハル・ベリーがいかに隔離病棟を脱出し、真相を暴くか? みたいな話で、脱出方法にトンチ少なく、また真相を暴いてみたら、結局、ハル・ベリーの夫を斧で惨殺したのはやっぱり○○じゃん! と、ツッコミを入れたいところですが、主人公の視点からのみ物語を語っていく、その視点がブレないのがグーです。

 カソヴィッツの演出は、途中で犯人がわかってしまうのが玉に瑕、しかし、奇を余りてらわず安定しており、題名は『ゴシカ』で脚本的にはゴシック・ホラー再生をめざしているんでしょうけど、冒頭ハル・ベリーのキスシーンはヒッチコック風長回しのクラシックな印象、しかし段々と『エクソシスト』『シャイニング』『ジェイコブズ・ラダー』あたりのモダンでクールなホラーの雰囲気が漂ってなかなかよろしいんじゃないかと。

 ところどころ無闇に残虐なシーンがありますが『ゴーストシップ』ほどエゲつなくないし、幽霊さんがいきなり登場してビビらせてくれますが飛び上がるほどでもないので、ホラー、スプラッタが苦手な方も心安らかにご鑑賞いただけるのではないでしょうか? 刑務所病院の患者という設定なんで、ほぼ素ッピン(に見えるメイク?)でもなお美しいハル・ベリーの、薄着・裸足で逃げまくる疾走ぶりが最高ですのでオススメする次第。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Mar-8;
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