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 Movie Review 2003・9月8日(MON.)

パンチドランク・
ラブ

公式サイト: http://pdl.eigafan.com/

『ウォーターボーイ』『リトル・ニッキー』など傑作を連発し、現代アメリカにあって最も信頼のおけるコメディアン、アダム・サンドラーの新作ですが、監督は、なんと『ブギーナイツ』『マグノリア』のポール・トーマス・アンダーソンでございます。うーん、一抹の不安がよぎる組み合わせですね。

 さて現代アメリカで最重要と注目を集めているポール・トーマス・アンダーソン(通は“PTA”と略すそうです)、『ブギーナイツ』は 70 年代デカチン青年がポルノ映画のスターになってウハウハというお話でたいそう面白く見たのですが、『マグノリア』は世評やたら高めなれど、上映時間長くてゲッソリ、さて今回の新作は、TIME 誌に掲載された「お得なマイレージ・プロモーションに目をつけ、12,000 個のプリンを買って 125 万マイルのマイレージを貯めた男」という驚愕の実話に材を取っております。…って、そんな三面記事の片隅に乗るようなどうでもいい話をネタにするとは…。と、いうか、そんなホントどうでもいい話をネタにしたから上映時間が 95 分(『マグノリア』の約半分)に収まったのでございましょう。喜ばしい限りでございます。

 実際、ネタの貧困さがありありと感じられる仕上がりです。観客の神経をいらつかせる音楽や、唐突に挿入されるサイケな映像など、いわば MTV と同じ、P ・T ・アンダーソンが「才能豊か」であるのは、まったくその通りで、この『パンチドランク・ラブ』においても、二つの交通事故シーンの暴力性は圧倒的、A ・サンドラーが時おり見せる凶暴さにはビビリっ放しで、個々のシーンの演出力は確かなものです。しかし、語られる物語の薄さはいかがしたものでしょうか? さすがアメリカ帝国を代表する若手監督さんですね、と私は一人ごちたのでした。

 というか、アダム・サンドラーの芸という立派な中身があるのに、色々と粉飾を凝らしてつまんなくなっちゃいました、という、アメリカ人監督がカンフーファイトを撮るみたいなことになっております。コメディは、コメディアンの至芸を、凡庸なまでに、いかに正確に記録するかだけに留意しておればよいのだ、と私は一人ごちたのでした。

 もしこれがベン・アフレック(適当)主演であれば大いに楽しめたと思うのですが、アダム・サンドラーの映画を見に行って爆笑できないなんて、辛い映画体験でございました。それでもよければ、オススメ。

☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Sep-8;

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