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 Movie Review 2003・8月6日(WED.)

茄子
アンダルシアの夏

 遠くへ行きたい。黒田硫黄の、茄子をめぐる連作短編集『茄子』から『アンダルシアの夏』を、高坂希太郎が堂々のアニメ化である! ババーン!

 不思議なことに、どうやら巷では今、ロードレーサーが大ブームのようでであります。忌野清志郎氏(この映画の主題歌も担当)がすっかりハマっていたり、漫画の世界では、黒田硫黄氏はもちろん大友克洋氏も、またアニメ界では、この作品の制作会社マッド・ハウスやスタジオ・ジブリでロードレーサーに乗る方が続出している、というウワサでございます。

 一体何が彼ら(私も?)をそうさせるのか? ロードレース中継を 3 時間も見れば、疑問はたちどころに氷解、ロードレースの魅力のとりこになることうけあいなのですが、日本ではスカパー/ J スカイスポーツにでも加入しなければ、なかなか見られないのが現状。そこでオススメが、この『茄子 アンダルシアの夏』。ロードレースの魅力が詰まった、恰好の入門編でございます。当初、オリジナルヴィデオアニメとして製作が開始されたため、上映時間はたったの 47 分、料金も 1000 円ポッキリとお得となっております。

 この作品で描かれるのは、世界三大ツールの一つ、“ブエルタ・ア・エスパーニャ”の、“平坦ステージ”と呼ばれるレースです。約 20 余日をかけてスペインを一周するブエルタ・ア・エスパーニャ、厳しい山岳コースの合間の平坦ステージでは、総合優勝を狙う選手たちは集団で楽に走るみたい。主人公は、アシスト専門のペペ・ベネンヘリ。普段はボトルを運んだり、エースを助ける役目の目立たない存在ですが、たまたま生まれ故郷の村をレースが通るその日に、猛然とアタックをかけるのであった。ババーン!

 実際の中継では、選手の胸中は想像するしかないわけで、ことにアシスト選手がクローズアップされることは稀でございます。日の当たらないアベレージ・レーサーの、人生たった一度かもしれない猛アタックに、私は呆然と涙したのでした。

 とはいえ、兄貴と、昔の彼女(小池栄子)の結婚式当日、地元をレースが通るとは…、しかも…(ネタバレ自粛)…とは、ドラマチックにも程がある! のですけど、原作がそうなのですから仕方がないか?

 そんなことより、レースシーンは、違和感を(ほとんど)感じさせません。アニメーターの並々ならぬ努力があったに違いありません。と、いうか、ゴール前 1km の手に汗握り具合は、実物のレース中継観戦を彷彿とさせるほど見事。って、まさにゴール手前、いきなりタッチが変わるのはいかがなものか、と思いますけど盛り上がるので良しとしましょうか。

 高坂希太郎監督は、スタジオジブリの作画監督だそうで、今回、脚本を書くのは初体験だったそうです。絵のタッチはジブリ風にアレンジされておりますが、セリフから何から原作の漫画そのまんま。「お前の仕事を言う…勝利だ!」「アサディジョ漬けには地ワイン…これは法律だ!」…などの痛いセリフもそのまんまで、原作のファンもお楽しみいただけるのではないでしょうか。

 それはそれとして、自転車の動きは CG も多用されて極めてリアル、これやったら J スカイスポーツの中継を見ていた方が面白いかも? いや、音楽・効果音が入るので、より盛り上がる? とりあえず、解説が青嶋達也氏でないことにホッと胸をなで下ろしつつ、今ひとつアニメ作品としての存在意義がよくわかりませんが、好き者が寄ってたかって作り上げ、ロードレースの魅力の片鱗がキラキラと輝いておりますので、ぜひ、巷で話題のロードレースがどんなもんか一つ見てやろうかいな、という方にバチグンのオススメでございます。47 分、料金 1000 円ポッキリ。

 実は、このレビュー、続きがありまして、「power's cycle diary」に掲載させていただいてます。あわせてご高覧ください。

映画評:「茄子 アンダルシアの夏」by BABA

☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Aug-6;

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