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 Movie Review 2003・4月26日(SAT.)

ラストシーン

 弥生座ナイトムービーでこっそり公開されてからだいぶん経つのですけど、ぐわーんと熱いものがこみあげる傑作ということで、遅ればせながらレビューさせていただきます。

 監督は『リング』の中田秀夫。『女優霊』でも、映画の撮影スタジオを舞台とし、スタジオというものは寂れまくって、もはや魔物が徘徊する状況である、と諦念をにじませたわけですが(適当)、この『ラストシーン』では、映画スタジオ、ひいては日本映画再生の可能性を高らかに謡い上げるのであった。

 物語は、昭和 30 年代、スタジオが「夢の工場」だった時代。日活を思わせる撮影スタジオから物語は始まります。とある人気女優の相手役に抜擢されてスターになった三原(西島秀俊)、大女優が引退してしまって次回作の主演から下ろされてしまいます。ガーン!

 唐突に 35 年後。『ドクター鮫島 THE MOVIE』を撮影する現場は、緊張感のカケラも無し、スタジオの小道具さんミオ(麻生久美子)は、一生懸命ですが、空回りする日々を送っています。…むむむ。誇張もあるのでしょうが、監督みずから撮影中に鳴った携帯電話でしゃべってるようじゃ、いい映画が作れるわけないなー、と私は日本映画のノー・フューチャーぶりに呆然としたのでした。

 その現場に、ちょい役の老人として現れたのは、35 年ぶりに映画出演を決めた、かつてのスター三原(ジョニー吉長)であった。三原がかつてのスターだったことを知る者は少ない。適当に撮り上げるべきシーンに、三原老人は渾身の力をもって演技に打ち込む! ババーン! 「どうせテレヴィの映画版だから、適当なところで撮りあげちゃえ、監督も全然やる気ないしー」みたいな雰囲気だったカメラマン、照明技師らが、三原の鬼気迫る演技によって、「活動屋」の魂(SOUL)を取り戻していくのであった…というお話。

 小道具さんミオは不満を露わにして言います。「どうせ、こんな映画、テレヴィの映画化だし、面白い映画ができるわけないわよ!」(うろ覚え)。それに対し、かつてのスター三原は言います。「面白いか、面白くないかを決めるのはお客さんだよ…」。くくっ! 泣ける。かつての傲慢スターが、こんな謙虚なセリフを吐くとは。スター三原は、なんだかよくわからない内にスタジオに放り込まれ、スタジオこそが人生となった男です。映画に翻弄されながらも、映画人としてのアイデンティティを貫徹しようとする姿に私は感動の涙を流したのでした。

 ジョージ・キューカー『スタア誕生』、ビリー・ワイルダー『サンセット大通り』『悲愁』、フランソワ・トリュフォーの『アメリカの夜』など、映画の撮影現場を舞台にした映画とは、「映画とは何か」について自覚的な映画であり、鼻の奥がツンとくるほど無闇に面白いものですが、この『ラストシーン』も低予算ながらも全編に映画がつまった傑作であります。中田秀夫、最高。なかなか機会がないかもしれませんが、劇場でこそ見ていただきたいバチグンのオススメ。

☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

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