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 Movie Review 2002・12月16日(MON.)

ハロー
ヘミングウェイ

 珍しいキューバ映画であり、時代設定はヘミングウェイが住んでいた頃、キューバ革命前夜 1956 年、アメリカに憧れる貧しい女学生のお話、というだけでワクワクですね。ババーン!

 ヘミングウェイが住む農場隣の叔父さんの家に、母親とともに居候する貧乏女学生ラリータ。彼女は、壁にジェームズ・ディーンやなんかのピンナップをベタベタ貼るほどアメリカ好きで、アメリカ留学のために奮闘します。しかし、キューバはアメリカ傀儡政権バチスタ打倒の機運が高まっており、学生運動もボチボチと盛り上がる。ボーイフレンドも生徒会に入れ込むそんな時に、ラリータはアメリカに憧れ、留学をめざすので、クラスの中でどんどん浮いていくのであった…、と、メチャクチャ面白そうなんですけど、演出が割としょぼく、音楽も安物くさくてパッとしないのですけど、話は面白いので良しとしましょうか。

 そいで、ヘミングウェイはほとんど登場しないのですが、代表作『老人と海』が重要なモチーフとして使われております。アメリカ留学の道を絶たれ、悲嘆に暮れるラリータは『老人と海』を「悲しい物語」と読む。しかし左翼先生は「『老人と海』は悲劇じゃないわよ」と言う。私は『老人と海』を読んでいないのでポカンと口を開ける。この辺に映画の中心テーマが据えられているようです。「留学の夢がかなわなかった」ということでは悲劇なのですけれど、後にキューバ革命で社会主義政権が樹立すれば、ラリータも(一応?)貧困から脱出できるので結果的にはよかった、ということかしら? …ってそれでは単純すぎますね。観客の判断でどうとでもとれるラストでございます。学生運動の描き方も、「余裕のある裕福な家の学生でないと運動できない」みたいに微妙に批判的に描かれていて、『バスを待ちながら』同様社会主義プロパガンダの枠組みをはずれております。これ以前のキューバ映画が、どういう状況だったか知りたいところです。

 主人公ラリータを演じるラウラ・デ・ラ・ウスがあんまり可愛くないのですけど、革命前夜キューバの雰囲気がうかがえるのでオススメです。

☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Dec-16;

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