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 Movie Review 2002・12月2日(MON.)

なごり雪

公式サイト: http://nagoriyuki.com/

『転校生』『青春デンデケデケデケ』などバチグン傑作多数の大林宣彦監督の新作は、大分県臼杵が舞台の、フォークソング『なごり雪』をモチーフにした作品。映画が始まりタイトルバックで『なごり雪』作者・伊勢正三が朗々・粛々と曲を絶唱されるのにまず観客は度肝を抜かれることになる。私は椅子からズリ落ちそうになりました。ズルッ。むむ、何やら映画の成り立ちを説明する字幕も出て、この作品が、ただ者ではない予感が漂います。

 伊勢正三、そして主演の三浦友和・ベンガルの三人が同い年の 50 歳。『なごり雪』という曲が生まれたのが 28 年前、ちゅうことで、伊勢正三の故郷の近所・臼杵を舞台に 28 年前の思い出と現代が交錯する、切ないロマンチック・ストーリーです。

 東京。女房に逃げられた三浦友和は一本の電話を受ける。故郷の臼杵から、高校時代の友人ベンガルが「雪子が交通事故で死にそうである。帰ってきてください」との知らせ。雪子とは、三浦友和にとって臼杵での妹のような存在であります。28 年ぶりに、電車を乗り継いで臼杵に向かう車中、昔を思い出していくのであった(ここで回想に入る)…と。ババーン!

 28 年前を描くのに大林監督は「言葉」にこだわったそうで、登場人物のセリフ回しが快調でテンポがいいのですわ。普通のドラマならば、ググッとためてしゃべられるであろうセリフも、ポンポンポポーンと放り出されていきます。大分県の田舎なのに、みな標準語を話すのが気になりますが気にしません。それと、『なごり雪』の歌詞、「汽車を待つ君の横でボクは時計を気にしてる」などがセリフに取り入れられており、「うぅっ! さぶっ!」と悪寒に襲われそうなんですけど、全編「そんな風にはしゃべらんやろ?」というセリフ回しなので、寒さが和らげられている気がします。

 そんなことはどうでもよくて、祐作=三浦友和にムカついてしまうのは、「なぜ自分は雪子さんの気持ちを踏みにじってしまったのか?」に関する反省がなく、まあ人生そんなもんですよ、と他人事のようであり、まあそんなものかと思いますけど、号泣するのはベンガルではなく三浦友和でなければならないのではないでしょうかね?  ちょっと後味悪いのでありました。

 ともかく大林宣彦も随分と老人力がついてきたようでございます。雪子さんが「雪よ! 雪よ! ホラ見て! 雪よ!」とベランダから発泡スチロールをばらまくシーン(この女、ヤバイ!)、仏像が大写しになるカット、狛犬の喧嘩など、老人力みなぎる名シーンが連発です。ただ者ではない感じ。ともかく臼杵の風物がいい感じですし、瀧廉太郎『荒城の月』のモデルとなった岡城ロケも興味深くオススメでございます。

☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Dec-02;

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