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Movie Review 1月21日(SUN.)

追撃者

 お! 今度のスタローンもなかなかいいじゃん! ときどきとんでもないモノを誉める、と定評があるボクだが、おもしろく見てしまったものは仕方がない。スタローンは『ロッキー』でアメリカン・ドリームを掴み、その後数多くのオレ様映画に出演してきた。ところが『コップランド』で負け犬に回帰、今回も負け犬。やっぱりスタローンは負け犬が似合うのだ。いや、『ジャッジ・ドレッド』『デモリション・マン』みたいなオレ様映画も好きなんですが。イエーイ、スタローン最高!

 スタローン演じるのはラスヴェガスの借金取り立て屋。弟が交通事故で急死、故郷のシアトルへ。弟は飲酒運転するようなヤツではない! と、アレコレ聞き込みするうちに…。1971 年、マイケル・ケイン主演『狙撃者』(未見)のリメイクらしいが、アレ? 何だコレは。昨年公開された『イギリスから来た男』にソックリではないか。映像・編集の雰囲気も似ているぞ。

 監督は新鋭スティーヴン・ケイ。キアヌ・リーブス出演のビートニクス前夜を描いた『死にたいほどの夜』の監督だ。考えるに『イギリスから来た男』のスティーブン・ソダーバーグ監督同様、1970 年代アメリカ映画にこだわるヤツと見た。まあ『イギリスから来た男』なんてアメリカでは見ている人も少ないだろうから、真似してもバレないだろう、チョコチョコ変えてるし、と思ったかどうか知らないが、大丈夫か?

『イギリスから来た男』同様、『追撃者』にも 70 年代アクションの必須アイテム=カーチェイスがあったりする。しかも編集を担当しているのは、カーチェイスの原点『フレンチ・コネクション』の名編集者ジェリー・グリーンバーグだ。高架下でのカーアクションは『フレンチ〜』を彷彿とさせる出来の良さだぞ。

 スタローンの、姪に対するロリータ的欲情を暗示したり、アラン・カミングがゲイであることをゴルフに関する会話でほのめかしたり、というのも、ゲイやロリータをあからさまに描けなかった 70 年代風だったりするな。

 映画の中で、借金取り立て屋の過去にはほとんど言及されない。しかし、スタローンの昔馴染みで、今やエロサイトで大もうけしているバブル成金にミッキー・ロークがキャスティングされている。M・ロークと言えば、元ボクサー。『ロッキー』でのし上がったスタローンと、M・ロークのボクシング・スタイルのガチンコ勝負を見れば、スタローンも昔はボクサーで、腕っ節を買われて借金取り立て屋になったのだな、ということが分かる、という仕組みである。面白いじゃないか。

 舞台がシアトルなのも興味深い。かつてシアトルはなんてことない都市だったが、今や、スターバックス、アマゾン・コム、そしてマイクロソフトの本拠地としてアメリカン・バブルを象徴する場所になっている。5 年ぶりにシアトルに戻ったスタローンは、借金取り立て屋としての自らの職業をこう規定する。「オレの仕事は、忘れていた大事な約束を思い出させることだ」。この映画の悪役の一人、アラン・カミングは、30 歳で個人資産 9 億ドルのソフトウェア会社の社長で、どう見たかてこれはマイクロソフトのビル・ゲイツだ。すなわち、この映画はアメリカン・バブルで儲けて倫理を失ったヤツを、バブルに乗れなかったスタローンが懲らしめる、という図式。バブル成金に対する、プア・ホワイトのやっかみ感情を反映した作品なのである。

 タイトルバックは『インビジブル』『シックス・センス』などのピクチャー・ミルが担当。なかなかカッコいいぞ。スタローンの顔がどんどん不気味になって来ているのも見所。オススメ。

BABA Original: 2001-Jan-21;

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