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Movie Review 2000・5月9日(TUE.)

クレヨンしんちゃん
 嵐を呼ぶジャングル

 生来の怠惰さから、このシリーズを見るのは初めてであるが、ゴールデン・ウィークに見た中ではもっとも楽しめた作品。

 主人公の「しんちゃん」こと、しんのすけと、その家族は、「アクション仮面」の新作映画の船上プレミアが行われる南の島・船の旅ツアーへ。そこに何者かが侵入、大人達が忽然と姿を消してしまう。しんのすけは、春日部幼稚園の仲間とともに、謎の島へと大人達を捜索に出かけてみると、そこには…、という話。基本的なプロットは『地獄の黙示録』にインスパイアされたものとなっている。深い意味はないと思いますが。

 素晴らしいのは、しんのすけのキャラクター造形だ。如何なる危機に陥ろうとも、人の神経を逆撫でしてしまう言動を弄するのが、最高である。それは、ただ人を怒らせるためだけの言動ではない。しんのすけは徹底したリアリストであり、事実をありのままに述べるラジカルさ故に、既成概念に囚われる者を怒らせるのだ。しんのすけのセリフはどれも名セリフぞろいなのだが、そのうちのひとつを紹介しよう。

「腹が減っては、いいクソは出ない」

 前半の謎の提示、ジャングル探検とテンポは快調、後半、「悪役」の造形が出色。パンフによると『ロッキー・ホラー・ショウ』のフランケンフルターに影響を受けているとかの、気持ち悪くダサカッコいい悪役だ。わけわかりません。クライマックスは、アクション仮面が「正義は必ず勝つ」ことを示すためにガンバリを見せ、グッと来る。

 しんのすけの行動は、すべてアンチヒーローな、世間を小馬鹿にしまくったものだ。アナーキーな(とすらいいたくないくらいアホな)行動・言動が良い方に転がって、事件を解決してしまうのが痛快。天の邪鬼が世界を救う。

『ウォレスとグルミット』風の粘土アニメのタイトルバックから、脱力感満点の、おもしろいのか、おもしろくないのか、よくわからないラストまで、場内のチビッコにも大ウケで、映画と観客が一体になる幸福感を味う。強力にオススメ。

BABA Original: 2000-May-09;

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