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Movie Review 2000・5月6日(SAT.)

イグジステンズ

 クローネンバーグという監督に対してみんなはどんなイメージを持っていることでしょう。いろんなイメージがあると思いますが、少々ややこしい印象を持っている人も少なくないのではないでしょうか。

 かくいう僕も、最近の、イメージとしては、わかりにくい、マニアックな感じを拭いきれなかったものです。しかし、ちょっと待って下さい。確かに、ここ数年の、『裸のランチ』、『M ・バタフライ』、『クラッシュ』など文芸ものにはそう言ったイメージは否めないものの、元々クローネンバーグの真骨頂と言えば、『ザ・ブルード』であり、『ビデオドローム』であり、『デッド・ゾーン』であったはずなのです。そう、プリンス・オブ・ホラー、娯楽エンタテインメントの大家であったはず。そんなクローネンバーグが久しぶりに帰ってきた! と言う映画でした。とにかくわかりやすいぞ! と言うことを特筆しておきましょう。

 物語は、近未来、とあるヴァーチャル・リアリティゲームの新作発表会から始まります。そこで、神とも崇められる天才女性ゲームデザイナーが狙撃されます。たまたま居合わせたゲーム会社の新入社員と、ゲームデザイナーが、逃亡の末、問題の新作ゲーム『eXistennZ』を体験する。と言った感じで進んでいくのですが。二転三転、大どーんでーん返しのストーリーに関しては多くを語るのは止めましょう。さっきにも言ったとおり、非常にわかりやすい映画なので、ラストも半分ぐらいは読めてしまう嫌いはあるのですが、娯楽エンタテインメントなのですからそんなことはほっておいて映画に没入するべし!

 随所で見られる小道具の奇形加減や、内臓感覚は、『ザ・ブルード』を彷彿させるし、冒頭の狙撃シーンは『デッド・ゾーン』を、あるメディアによる、現実世界への浸食と言ったテーマは『ビデオ・ドローム』から脈々と受け継がれていると言っていいでしょう。クローネンバーグは、なんとこの映画で初めて C. G. を使ったらしいのですが、勿論それに乗っかったような映画作りはしておりません。やはり彼は手作りの人なのです。

『デッド・ゾーン』のクリストファー・ウォーケンのような、役者の力が少々不足しているような気がして、そこら辺がちょっとばかり物足りないところでもあるのですが、いやしかし、何度も申しますがこれは B 級娯楽エンタテインメントなんです。1 時間 37 分と言う上映時間もちょうどいい、納得の 1 本でした。美松劇場のあと、13 日より、みなみ会館で上映続きます!

kawakita Original: 2000-May-06;

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