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Movie Review 2000・8月3日(THU.)

パーフェクト・ストーム

 ウォルフガング・ペーターゼン監督作。この監督には『U ボート』という傑作があり、『第 5 惑星』『シークレット・サービス』など、底抜け気味の超大作でも、そこそこ楽しませてくれているが、今回はどうか?

「パーフェクト・ストーム」と呼ばれる、アメリカ観測史上、超たいへんな嵐に巻き込まれたカジキマグロ漁船を中心に、空軍救援隊の奮闘などを描く。

 アメリカ映画には、苦しくっても頑張っている労働者こそをヒーローとする伝統がある。『ボルケーノ』、『タワーリング・インフェルノ』では消防隊員たちの献身的な活躍が描かれており、また『ER』もまた、救急病院のスタッフたちの努力を描く、という点でその延長線上にあるのだろう。この『パーフェクト・ストーム』も、漁業従事者、そして空軍救援隊気質を肯定的に描いており、「はたらくおじさん」万歳! って感じ。かつてのアメリカ社会主義運動の名残だろうか。

 特に、今回、ネヴァー・ギヴ・アップな空軍救援隊はメチャカッコいいぞ。また漁船の方も、カジキマグロ漁ってこんな感じなのね、と、おじさんたちの仕事ぶりが見れるのも興味深い。

 前半は漁船の乗組員の人間関係を描き、後半は徐々に嵐が迫り、一旦嵐になったら、もう、大雨の中でぎゃあぎゃあ喚いているだけで、何がなんだか、なんだが。

 ここから決定的にネタばれ。ご注意。

 実話の映画化、ということだが、どうも釈然としない。漁船は巨大な波に乗り込まれ、マーク・ウォールバーグのみ沈みゆく漁船から海面へと脱出する。なるほど、この映画は M ・ウォールバーグの証言に基づいたものか、と普通は思う。しかし、なんと M ・ウォールバーグも死んじゃって、つまり漁船の生存者はゼロ。

 ちょう待てよ! つまり、漁船でドタバタしてたのは全部フィクションってことじゃないか! こんなもん「実話の映画化」と言えるかい。

 と、いうことで、冒頭に漁業組合の壁にずらりと刻まれていた名前は、漁で命を落とした者の名前だったのね、ってことが判るラストを感動的に盛り上げるのだけれど、「実話」であるからには M ・ウォールバーグは生還せねばならぬのだ。勝手に盛り上がるんじゃない! どないなっとんねん! 責任者出てこい! どうも「Based on a true story」というのは、限りなくフィクションに近い、ってことみたい。

 ともかく、嵐を再現した ILM のコンピュータ・グラフィックスは、とりあえず最前線みたいなんで、オススメ。とはいえ、技術的にはスゴイんだろうがセンスという点で近年パッとしてないんで、ぜひに、とは申しません。でも、漁船に乗り込む『スリー・キングス』コンビ、G ・クルーニと M ・ウォールバーグ、さらに『ブギーナイツ』のジョン・C ・ライリーとかの男優のアンサンブルは、荒くれ男の友情風でちょっと泣けるところもあり。オススメ。

BABA Original: 2000-Aug-03;

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