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Movie Review 2000・8月2日(WED.)

ボーイズ・ドント・クライ

 予備知識なく、実話の映画化ということも知らず見に行ったもので、『ボーイズ・ライフ』みたいな、少年がちゃらちゃら苦労する映画かと思ったら、ヘヴィな話でズーンと来た。

 主人公のブランドン・ティーナは、本名がティーナ・ブランドン。「性同一性障害」らしく、自分が女性であることに違和感を持っている。短髪にジーパンをはき、股間に靴下を丸めたものを突っ込んで、ハンサム・ボーイに変身、夜のクラブ(?)に繰り出してナンパに明け暮れる。

 アメリカ中南部のネブラスカへ。ブランドンは、「男性」としてマッチョな世界に溶け込んでいく。しかし、ブランドンを男と思って仲良くしていた人々が、少しずつ違和感を増幅させ、ついには悲劇的な結末を迎えるまでの憎しみを持つにいたる。見終わった後で、なるほどこういう犯罪に「ヘイト・クライム」というレッテルが貼られるのだなと感じたわけで、ブランドンならびに周囲の人々がリアル。

 ホワイト・トラッシュの状況を丁寧に描いている。男たちは、夜中に車を飛ばしたり、トラックの荷台に乗ってサーフィンのマネごとをしたり、はたまたナイフで自分を傷つけることでしか「生きていること」を実感できない。毎日が単調な繰り返しのノー・フーチャーだ。

「オマエもオレもホワイト・トラッシュだぜぇ」と仲間意識を持っていたのに、実は女性であった、と知れば「裏切られた」と思うのも無理はなかろう(そうか?)。そこから憎悪が生まれる。

 憎悪に対比して「純愛」も描かれる。ブランドンと恋仲になるラナっちゅうホワイト・トラッシュな女性も、実は、退屈な日常から自分を連れだしてくれるからブランドンを「愛し」続けたわけで、「憎悪」の根拠も、「純愛」の根拠も、ともにホワイトトラッシュ的貧困なのだ。どこに行ってもイケてないヤツばかりのアメリカ中南部に生まれて出口なし、となれば誰かを思いっきり憎むか「純愛」に身を捧げるかしかないのである。というのはあまりにシニカルな見方でしょうか。

 主演のヒラリー・スワンクは、いかにもアカデミー主演女優賞を取りそうな役柄を見事に好演。ちょっと爆笑問題の太田光に似てたりして、笑いを誘う(ワシだけ?)。お相手のラナを演じるのは『KIDS』のクロエ・セヴィニー。ヤングのファッション・リーダーらしいが、「誰や、このイケてない姉ちゃんは!」と絶句するホワイト・トラッシュぶり。「アタシがキャラオキ(カラオケをこう発音してます)唄って稼ぐから、あんたはマネージャーして全国を旅しようよ」などとのたまう脳たりんぶりを演じきって痛快。アメリカ中南部にはプロのカラオケ歌手がいるんだろうか。どうでもいいけど。

 監督は新人キンバリー・ピアース。タッチは『マイ・プライベート・アイダホ』のガス・ヴァン・サントを、田舎臭くしたって感じ。なんか妙に話題作みたいなんでオススメ。

BABA Original: 2000-Aug-02;

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