京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 00 > 0403
Movie Review 2000・4月3日(MON.)

ストレイト・ストーリー

 さてさて私は京都朝日シネマの小さいスクリーンで観てしまいました。BABA さんのレヴューの後追いをするのも何ですが、いい映画に出逢ったときは迷わず投稿しようと最近思っております。

 この映画を見た前後、久しぶりにカポーティの『遠い声 遠い部屋』を読んでいたという妙な偶然がありました。この作品、ご存じの方も多いとは思いますがアメリカの田舎町を舞台に、少年の成長の過程を描いたものなのですが、不特定なアメリカの田舎町の原風景や、ゴシック的な描写など、なんとなくデヴィッド・リンチの世界とシンクロしてしまうのです。私だけかもしれないし、たまたま同時期に作品に接していたからそう思うだけかもしれませんが。そういうことで余計にこの映画、深く入り込んでいくことができたのです。

 で、この映画。タイトル通りなんともストレイトなお話ではあり、いつものリンチ風とは違った印象も拭えないこともないのですが、ところがどっこいデヴィッド・リンチという人の底辺には実にヒューマンなところがあるのは、過去の作品をじっくり振り返って貰えば明白なところ。『エレファントマン』しかり『イレイザーヘッド』しかり、『ワイルド・アット・ハート』だってそうでしょ。題材が異質で、ハードだっただけで、実は感動ものだったりするわけです。それにしてもアメリカの田舎の風景ってそれだけでゴシックに見えてしまうのは、やはり『ブルー・ベルベット』の影響力ですかね。今回耳は落ちてませんでしたが。

 そしてやはりその映像の美しさ。これは特筆すべきでしょう。ホント、やっぱりイオンシネマがオススメかもしれません。トラクターで旅するシーンのその淡々としながらも微妙な感情表現みたいものは、何となく私は『イージー★ライダー』を思い出してしまいました。映像の質感は全く別物ではあるのですが(そういえば『イージー★ライダー 2 』をつくるというはなしはどこに行ったのでしょう)。60 年代末に作られた『イージー★ライダー』は大きな転換期を迎えたアメリカで、どこにも自分たちの居場所を見つけられなかった若者というには少々とうのたった男たちの話でした。デニス・ホッパーは、かつての [アメリカ]というものがどこにも無くなってしまった [アメリカ]を決して許さなかったような気がします。そして 2000 年を迎えた今、デヴィッド・リンチは実に寛容な[許し]というものを自らの美学によって描ききったんだと思います。デニス・ホッパーがもし、今『イージー★ライダー 2 』を撮ったとしたらやはりこんな映画を作ったんじゃないかという気がするのです。もう、『イージー★ライダー 2 』は必要ないですね。

 なんか話がとことん脱線してしまいましたね。ラストでほんの少しの時間ではありましたがお兄さんを演じたハリー・ディーン・スタントンがまた秀逸でした。人はみんな死に向かって生きている。それまでに何度か、こんな風に重い腰を上げなければいけないときがあるんだということを改めて思い知らされた映画でした。

kawakita Original: 2000-Apr-03;

レビュー目次