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 Diary 2001・9月30日(SUN.)

狼煙は
上海に揚る

 京都映画祭最終日。『狼煙は上海に揚る』(1944 年)を観る。これは阪妻主演、稲垣浩監督で、李麗華など支那の名優が大勢出ているという事もあって、大変有名な作品だったらしいのだが、日本国内にはフィルムが残っていず、幻の作品と言われてきた。それがロシアの国立映画保存所で発見され、このたび目出度く京都映画祭で上映ということになった、今回の目玉のひとつである。

 残念ながら、最初の部分のフィルム一巻が欠けており、途中からの上映となったが、シナリオを読んだ事のある山根貞男が、不足部分の説明をしてくれたので、それほど気にならずに観ることができた。時は幕末。阪妻演じる高杉晋作が、幕府の一行とともに、イギリスの租界(植民地)となった上海に渡る所から映画は始まる。上海でロケをしており、当時の上海の様子が非常に興味深い。

 また、話もなかなか面白い。イギリスによって半ば植民地化された支那では、太平天国の乱が起こっている。太平天国の乱は、ナショナリズム運動の一種である。阿片貿易によって祖国の支那をボロボロにしたイギリスに対しての、攘夷運動という側面が当然ある。が、なぜか太平天国軍はイギリスに頼っている。それは、太平天国は一応反乱軍なので、政府から弾圧されているのだが、その政府との闘いをイギリスが支援してくれると約束してくれたからだ。

 その事について、同じく攘夷派の阪妻・高杉晋作は突っ込む。イギリスやアメリカがそんなに信用できるのか? アヘン戦争を仕掛けたのはどこの国だ? インドを、引き続き支那を植民地化したのはどこの国だ? 英米の魔の手は日本にまで伸びてきている、いまこそアジア人同士が手をつなぎ、英米を倒す時ではないか?

 これに対して、同じキリスト教徒の我々を(太平天国はキリスト教)、文明国であるイギリスが裏切る訳がない、と、一度は退けた太平天国軍の若き将軍(名前を失念)。が、結局はイギリスに裏切られ、太平天国軍は潰されてしまったのは歴史が教える通り。映画のラストでそのことに気が付いた若き将軍は、阪妻・高杉晋作と堅く握手をして語り合う。

「高杉先生! 私は間違っていました。アジアを植民地化するためのイギリスの陰謀に、騙されていました。私は彼らを全て祖国からたたき出すまで、闘い抜きます!!」

「判る! 判る!」

 例え言葉が通じなくても、熱い思いが伝わった阪妻・高杉は強く頷きます。そして言葉を返します。

「アジア人同士が手を握らなければならない。お互いに最後まで闘いぬきましょう!」

「判ります! 判ります!」

 日本は大アジア主義でいくしかない、と日頃から考えている私は、このシーンで熱いものが胸にこみあげてきたのでした。

 この映画が、例え技術上の拙さが多少あろうと、現在の映画に較べて優れているのは、やはり歴史認識(それは現状認識に繋がる)の正確さと、世界観の壮大さだろう。この頃から現在に至るまで、英米(今は主にアメリカ)は常に陰謀をめぐらし、アジアを、中東を支配してきた。その事に対するブローバックが、先日の米中枢同時テロ事件である。イスラム原理主義の人達も、太平天国の乱の人達も、日本の尊皇攘夷派の志士達も、みな同じだ。英米の支配に対する、土民達の草の根の反乱なのだ。我々はお互いに手を握りあって、英米の支配を(現在ならアメリカの支配を)脱しなければならない。

 こういう基本的な認識が、戦争中にはまだあった。が、戦後はアメリカにすっかり洗脳され、こういったアジアの運動を、狂信的で迷妄に満ちた土人どもが暴れている、といった完全に支配者側=白人側の発想で認識する、名誉白人どもが増えた。こういった恥知らずな名誉白人どもに思い知らせるためにも、この映画の完全復活を望みたいものです。

小川顕太郎 Original:2001-Sep-1;