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 Movie Review 2005年7月14日(Thu.)

復讐者に憐れみを

『JSA』のパク・チャヌク監督が、ソン・ガンホ(『殺人の追憶』の蛭子能収)+シン・ハギュンを再び起用しておくる復讐譚。

 この作品の後、パク・チャヌク監督は傑作『オールド・ボーイ』を撮りますが、「復讐する者は、同時にむにゃむにゃむにゃ(ネタバレ自粛)」とのテーマが共通しており、なんでも『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』、完成間近の『親切なクムジャさん』で〈復讐三部作〉となるらしいです。

 それはともかく、『JSA』が韓国でメガヒットをとばしたためかパク・チャヌク監督、フリーハンドを得たのかやりたい放題・好き放題、切れまくった演出で、状況説明的タルい描写はすべて編集で刈り取った印象、さながらゴダール作品のように、エッジが効きまくったカッコいいイメージの連続、ボケーッと見てると話がわからなくなるはず、って一生懸命見ていてもよくわからないところがありますけど、「次に一体、どんなカットがくりだされるか?」「どんな展開を見せるのか?」は予測不可能、ええ気持ちになれる映画体験でございます。

 主人公の一人シン・ハギュンは口がきけない設定、ということもあってか、映画全体でもセリフは極限まで減らされ、ド迫力の映像で、ぐいぐい話が進められるのが、なかなか凄いな、たいした演出力ですな、と改めて感心した次第。

 シン・ハギュンの姉は腎臓が悪く、ボクの腎臓を移植してくださいと乞えば、血液型が合わないからダメです、ならば腎臓を売って、代わりの腎臓を手に入れようと臓器売買の謎の組織におもむいたと思ったら次のカットでは丸裸で廃屋に転がっており、すっぽんぽんのまま表に出る…とか、いったい何がどうなったのかは勝手にご想像ください的意表を突く展開があざやかです。

 お話はというと、ネタバレですが鉄工所をクビになったシン・ハギュン、彼女ぺ・ドゥナにそそのかされ、腹いせにと社長ソン・ガンホの娘を誘拐、ところが社長の娘が突然死、ソン・ガンホは復讐の鬼と化す…と、復讐者が復讐され、復讐された者がまた復讐する、復讐の連鎖を描くのであった。

 復讐者たちは、復讐に明けくれますが、発端は誤解・行きちがい・勘違いであり、話せばわかる(かもしれない)ものです。「対話が圧倒的に不足しているから、暴力が連鎖していくのだ」というメッセージ内容が、セリフと説明的な描写が排され、暴力的な映像があふれかえる形式と一致しているゾ、と一人ごちました。

 そんなことはどうでもいいのですが、臓器密売やら幼児誘拐、死体遺棄など、救いようのない悲劇ですけど、『オールド・ボーイ』同様、悲惨なシーンは同時にコメディとなっており、眉をひそめつつほくそ笑むブラックユーモアが横溢します。

 ソン・ガンホはぺ・ドゥナを拷問するんですけど、電気ショックでぺ・ドゥナが失禁、小水が床をつたって流れてくるのを、ソン・ガンホは無表情に布団で防いで飯を食う…みたいな、スーパー・ハードボイルドでユーモラスで慄然とするバイオレンス描写は、北野武に匹敵するのでは…? と一人ごちました。

 パク・チャヌク監督は重みというか厚みというか、密度の濃ゆい映像を撮らせたら世界トップクラス、バチグンのオススメでございます。

☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Jul-14;