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 Movie Review 2003・8月12日(TUE.)

エデンより彼方へ

 世間では好評をもって迎えられているようですが、何が面白いのかさっぱりわからない映画でございました。聞けば、監督は『ヴェルベット・ゴールドマイン』のトッド・ヘインズ、さもありなん。と、いうか、監督自身によると、

「僕は『エデンより彼方に』をダグラス・サーク監督を好きな人だけのために作った。それ以外の人に観てもらえるなんて思ってもみなかったんだ」

「『エデンより彼方に』はダグラス・サークのメロドラマ、なかでも『天はすべて許し給う』(55)を元にしている。冒頭の秋の風景やいくつかのシーンは構図から何から完璧に再現してみせた」

http://www.eiga.com/special/eden/index.shtml

 …そうです。ダグラス・サーク作品を見たことがない私が、面白さをまったく解さなかったのも道理。というか、ジョン・ウォーターズ監督もまた『天はすべて許し給う』を元に、『ポリエステル』(81)を作ったそうで、そちらはバチグンの面白さだというのにだ、こちらのつまんなさはいかがなものか。

 お話はというと、50 年代アメリカ、裕福な重役夫人ジュリアン・ムーアは、人もうらやむ幸せな家庭、のように見え、しかし満たされない日々を送っており、と、いうのは、ネタバレですけど、旦那が隠れゲイだったからという、『めぐりあう時間たち』の裏返しみたいなお話、J ・ムーアは、いつしか黒人庭師に惹かれていくのでした、という、50 年代ならともかく、今ごろなぜこんな話? との疑問を呈さざるを得ず、今現在もなお、ゲイや黒人に対する差別が米国で横行しており、それを告発したいのなら、50 年代に時代設定する意味がよくわからないわけで、現代の話として語るには何か不都合があったのでしょうか? どうなのか? ていうか、50 年代の風俗が緻密に再現されており、むしろ力点はそちらに置かれているようで、ただひたすらミッドセンチュリーなインテリア、衣装の数々、エドワード・ラックマン(『エリン・ブロコビッチ』『イギリスから来た男』)による奇麗奇麗な映像を呆然と愛でるのみ。

 メロドラマですので、よくある話なのは良いとして、展開が読めまくる脚本の緊張感の無さはいかがしたものか? 例えば、残業で遅くなるという旦那に、J ・ムーアが夜食のサンドイッチを会社に持っていき、重役室のドアを開けると…… ガーン! ジュリアン、ショーーーック!! というシーンがあるのですけれど、旦那がゲイであることはすでに匂わされているので、J ・ムーアが鈍いだけやん、ドアを開ける前にノックしろよ、もっと気を使えよ、とご意見申し上げたい。

 とりあえず、ダグラス・サーク監督作品を好きな人にはオススメみたいです。

☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Aug-12;

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