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 Movie Review 2002・7月30日(TUE.)

タイムマシン

 1899 年ニューヨーク、大学教授アレクサンダー(『メメント』のガイ・ピアース)は恋人のエマをデート中に目の前で強盗に殺されちゃってもうたいへん、「かくなる上は時間をさかのぼってエマを救うべし」とタイムマシンを猛然と製作、さっそくエマを救わんと過去に戻るのですが…。ババーン。

 さて、以下ネタバレ。アレクサンダーは強盗からエマを救い出せたものの、今度は馬車事故でエマはまた死んじゃうんですな。「うーむうーむ、なぜ過去は変えられないのでせうか?」とアレクサンダーは疑問を抱き、その解答を求め、未来へ向かいます。

 ここが不思議。まず、エマを救えなかったのは 1 回の試行のみ、そこから「過去はなぜ変えられないのか?」と問題を立てるのはいかがなものか? エマは救えなかったとはいえ、強盗に襲われることは回避し、大きな過去の改変がなされているのですね。むしろ「過去は変えることができる。エマが馬車にはねられたのは偶然である」と推論すべきではないか? と思いますよ。

 エマを喪わなければアレクサンダーのタイムマシン製作への圧倒的なモチベーションが生まれず、そうなるとタイムマシンは製作されず、結局エマを救うことができない、エマは死ななければならなかった…っちゅうような結論が提示されますが、そうなると「運命を司る神」概念を持ちだして来ざるを得ず、私は「やはりアメリカはキリスト教社会であることよなあ、それはどうかと思いますよ」と独りごちたのでした。

 実はそんなことはどうでもよく、「過去を変えられない理由」を求めてアレクサンダーがたどりついたのは、2030 年。一般人の月旅行が可能な時代です。その 2030 年の道路状況を見よ! ヘルメットをかぶったサイクリストたちで溢れかえっているではありませんか! しかも、自転車の基本的な構造は 2002 年現在とほとんど同じ。なんと素晴らしい未来展望! 私は「自転車こそ未来の乗り物である、今、自転車に乗るのは未来を先取りした行為なのだ!」と卒然と悟ったのでした。

 いや、そんなこともどうでもよく、なんだかんだでアレクサンダーはなんと 80 万年後の未来を訪れ、そこで新しい彼女を見つけてエマのことはすっかり忘れて目出度し目出度し、「亡くした恋人を忘れるには新しい恋をするに限る」との圧倒的な真理に私は呆然と「なんじゃそれ?」とツッコミを入れたのでした。

 なんか、途中から何の話かよくわからなくなるのですが、空を見上げれば月が…、とか、タイムマシンの外部の時間が猛然と進む光景とか、久々に SF らしいセンス・オブ・ワンダーあふれ、更に未来人を襲う謎の筋肉人がメチャクチャ怖かったり。また、そこここに宮崎駿アニメの影響も見受けられたり見どころ多数、タイムマシンものの傑作『ある日どこかで』みたいなラブロマンス SF を期待するとエライ目に会いますが、意外な拾いモノです。まっさらな気分の方にオススメ。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jul-30;

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