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 Diary 2005年2月7日(Mon.)

睡魔との闘ひ

 眠い。たまに、恐ろしく眠い日があるが、今日はさうである。何故こんなに眠いのか。昨晩1時間ほどしか寝なかつたといふこと以外とくに理由は思ひつかないのだが、たぶん疲れが溜まつてゐるのだらう。日も悪いのかもしれない。調べてみたら「仏滅」であつた。フランスが滅んだ日だ。なるほど、これなら眠いのも仕方がないかもしれない。とにかく、睡魔と闘ひつつの仕事である。お客さんが少ないのも良くない。ユキエさんが奥でケーキの仕込みをする音、生地を泡立てるカシャカシャカシャカシャ…といふ音だけが、店に低く響き、後は数人のお客さんが静かに雑誌のページを捲る、サラッサラッサラ…といふ音が間歇的に聞こえてくるのみ。こ、これは眠い。眠らないやうに、落ちてくる瞼を必死に支へやうと努力し、ぐらつく膝を押さへる。

 この悪戦苦闘にすつかり疲れ果て、さらに眠気が襲ふ、といふ悪循環である。

 これではいけない。仕事中に眠つてゐる所をお客さんに見られると、店の評判に響く。私は自分に活を入れるつもりで、「私は眠くない!」と声に出して言つてみた。すると、意外に大きな声だつたらしく、お客さんが一斉にこちらを向いた。やばい。私は慌てて狸寝入りをした。訝しげな視線を全身に感じながら、私はひたすら寝た振りをする。しかし、何かこれは間違つてゐるやうな気がする……マジで、眠くなつてきた。限界かもしれない。

 暇だからいけないのだ。よし、ユキエさんの仕事を手伝おう。ユキエさん、なにか手伝ふことない? 「あ、それぢやあ、この赤スグリとブラックベリーの数を数へて下さい。ケーキに載せるんです。」よしきた! お安い御用だ! えー、と、1、2、3、4、5、6、7、8、…………。

「店主こんにちはー」

 あ、オイシン。あらら、寝てゐたやうだな。ゴメン、ゴメン。…ん? どうしたんだ、今日は仕事休みか?

「いやー、実はボクも晴れて会社を継いだんですよ。だから平日でも自由に休めるんです」

 え、もう社長になつたの? 早いなー。

「これでオパールでもバンバン飲み食ひできますよ。経費でいくらでも落ちますからね。いやー、ボクもやつと店主に恩返しできるやうになつて嬉しいです。」

 さうか…私も我慢した甲斐があつたよ。感無量だな。

「ぢや、とりあへず、ロマネ・コンティを10本下さい!」

 よし!!!

 ……夢だつた。

小川顕太郎 Original: 2005-Feb-7;