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 Diary 2003・11月17日(MON.)

 ベッチ来店。昨日『キル・ビル』を観て来たさうだ。面白かつた! といふベッチだが、殺陣のシーンにはなんとなく納得のいつてゐない様子だ。確かに、あれらの殺陣はへんてこりんだつた。はつきり言つて下手くそだらう。とにかく、腰が入つてゐない。パンフレットや雑誌などでよく使はれてゐる写真に、ユマ・サーマンとルーシー・リューが雪の庭で刀を打ち合つてゐるやつがあるが、あれも二人とも腰がひけてゐて、凄く変だ。もし千葉真一が現場にゐたら、絶対に撮り直しだらう。まァ、それを避けるために、タランティーノは本番には千葉真一を呼ばなかつたのだらうけれど。

 つまり、タランティーノはそこまで本格的な殺陣を撮らうとは、はなから思つてゐなかつたといふ事だ。それはユマやルーシーの喋る日本語のやうに、少し変な方が良いのだ。何と言つても、千葉真一でさへ、セリフはとちるし言葉は変だつた。でも、それでオッケーなのだ。ヤクザ映画やチャンバラが、日本を超えて世界にもたらしたモノが、そこにはある。

 ところで、『キル・ビル』の面白さがイマイチ分からなかつた、といふタカハシくん来店。タカハシくんは、昨日『座頭市物語』を観たさうだ。もちろん、勝新太郎主演・三隅研次監督のものだが、もちろん、我々が DVD を貸したのだ。で、この歴史に残る第一級の娯楽映画の傑作を観たタカハシくんの感想は…、「なんかァ、カッコイイやうな気はしたんですけどォ…」。さうか、残念。ま、それは良いとして、殺陣は『キル・ビル』と全く違つただらう? と問へば、首を傾げる。そこを横からベッチが、

「腰、腰。『キル・ビル』では腰が入つてなかつたでせう! 『腰』といふ字はどう書くの?」

「へ? え、えー?」

「『肉月』に『要(かなめ)』と書きます。武道も芸事も、日常の立ち居振る舞ひも、日本ではすべて腰が大事。」

「はー、腰、ですか…」

 さういへば、タカハシくんは文字通り腰が定まらず、いつもフラフラ・ユラユラしてゐる。真つ直ぐに立つことができないのか? といふ感ぢだ。いかんな、そんな事では。タカハシくんにはこれから毎日、四股を最低でも 100 回は踏んでほしいものだ。ドースコイ。

小川顕太郎 Original:2003-Nov-19;