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 Diary 2001・9月9日(SUN.)

せきをしてもひとり

 マツヤマさん来店。すでにビール 1 杯と冷酒 2 本を飲んできており、気勢はあがっている。マツヤマさんは先日、さる回転寿司屋にひとりで行った時に、周りの客が全てカップルと家族連れであり、なんとなく気詰まりな思いをしたそうだ。それでそんな気持ちを吹き飛ばすためと周りへの威嚇のために、マツヤマさんは熱燗をガンガンと頼み、一番高い皿ばかりを積み上げ、結局 6000 円以上も回転寿司で使ったという。うーむ。

「ええと、あれ誰でしたっけね。『せきをしてもひとり』って詠んだの」とマツヤマさん。「尾崎放哉ですか」「そうそう、尾崎放哉! ボクはねえ、自分は尾崎放哉みたいな人間じゃないかと、思うこともあるんですよ」

 尾崎放哉とは、破滅型の天才俳人であり、帝大を出て一流会社に入ったものの、酒の飲み過ぎで問題を起こして退社。以後、一流会社に入り直し→また酒で退社、というのを繰り返し、遂には妻を捨てて出家する。が、以後も酒癖は直らず、色々と問題を起こしながら全国の寺を転々とする。僧侶になったので基本的に無一文だが、昔の友人に酒代をたかり、無心の手紙を出しまくる日々。最後には小豆島の南郷庵という庵で、俳句仲間から送られてくるお金で生活し、病と闘いながら、読経と俳句三昧の果てに 47 歳で死亡した。天才俳人という事で免責されているが、とにかく傍迷惑な人である。

「やっぱさあ、日本人にとって俳句って、最高の自己正当化の方法じゃない。ボクもさあ、お酒飲んで酔っぱらって、カフェに来てトイレを借りて、ついでにコーヒーを飲みながら絡みまくる、っていう自分を正当化するには、句作しかないんじゃないかなあ。オパールで俳句道場ってやらない?」考えておきます。

 では尾崎放哉の句をいくつか。

 足のうら洗へば白くなる

 死にもしないで風邪ひいてゐる

 入れものがない両手で受ける

 いやー、俳句ってホントに素晴らしいですね。

小川顕太郎 Original:2001-Sep-10;