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 Diary 2001・5月29日(TUE.)

スターリングラード

 弥生座 2 にて『スターリングラード』を観る。いや、面白かったですね。非常によくできた娯楽作品で。う〜ん、でもいざこうやって何か書こうと思うと、何にも浮かんできません。なんかベニチオ・デル・トロの顔ばっかり浮かんできて。と言う訳で、『トラフィック』の話の続きを…、というのも何ですから、ちょっと強引に考えてみます。

 そもそも何でこんな映画を撮ったんでしょうかね。だって監督のジャン・ジャック・アノーはフランス人でしょう? で、出ている俳優はほとんど英米人だし、セリフはみんな英語。なのに何でソ連とドイツの闘いの映画なんて撮ったんでしょうか。

 まあジャン・ジャック・アノーが『セブンイヤーズ・イン・チベット』というリベラル左翼映画を前作で撮っていること、リベラル左翼急進派のエド・ハリスが出演していること等から、リベラル左翼映画なんだろうなあ、とは思うわけです。でも一体どういう意図で? と考えてみますと、これはソ連を救おうとした映画じゃないか、と思い至った訳です。

 1991 年にソ連が崩壊してから、左翼の人達は総崩れ、ジリ貧ですよね。それで秘かに転向していく人達が大半なんだけれど、なかには志操を曲げない人達もいるわけです。んで、そういった人達がソ連の英雄の話をかっこよく撮って、ソ連の悪いイメージをちょっとでも払拭しようと。

 もちろん、今さらまんまソ連を肯定できる訳がない。だからきちっとソ連批判も盛り込んであります。それでもなお、ソ連で悪かったのは共産党の上層部の奴らであって国民達は悪くないんだ、国民達は国家の上層部の奴らに騙されてたんだ、という風な描き方をすることによって、悪いのは国家・国民は善良、というリベラルお得意の図式を生き延びさせようとしている……。考え過ぎですかね。

 国中から掻き集められ、荷物のように貨物列車に閉じ込められて前線に送り込まれ、着いた途端に武器もないのに突撃させられてバタバタ死んでいく兵士たち。かといって逃げようとしたり、怯んだりしたら、「憶病者に用はない! 敵前逃亡は死刑だ!」と上官達にいわれ、そのまま銃殺。「兵士なんて死んだって、いくらでも補充がきくんだ! 絶対退却させるな!」と怒鳴りまくる下品なフルシチョフ。

 そんな悲惨な状況でも健気に闘い、最後はドイツをやっつけて、みなでお祭り騒ぎをする兵士たち。…なんていうのを観てますと、民衆万歳! とかいいたくなりますもんね。う〜ん、リベラル左翼! でも、お金を払って映画を観てくれるのは民衆の人達。ということは、ヒットを狙って作られた娯楽作品が民衆万歳になるのは当たり前か。ははははは。無理矢理考えてもあきまへんわ。

小川顕太郎 Original:2001-May-31;