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Movie Review 1999・9月18日(SAT.)

グロリア

 ジーナ・ローランズ主演、ジョン・カサベテス監督のオリジナルは大昔に一度見たきりであるから、それと比べてどうこう思うことはなく、これはこれでたいそうおもしろく見た。シャロン・ストーンと言えば最近では『マイフレンド・メモリー』(ってパッと思い出せないでしょうが、原題が“ Mighty ”っていう子ども二人が主人公のヤツ。)でなかなか良いところを見せていたが、今回も良い。ってオリジナルと比較してけなす人が圧倒的多数だと思うけど。ボクはなかなか良いと思うぜ。

 オリジナルの拳銃をぶっ放すキンパツ・サングラス・タイトスカートのジーナ・ローランズは、例えばウォン・カーウァイの『恋する惑星』にも引用されるくらいに定着しているイメージであるから、シャロン・ストーンに分が悪い勝負であるのはあきらかなんだが、少々フケてきた元娼婦・いい加減に生きてきた女性の悲哀のようなものがにじみ出てよろしい。常に眉間にシワを寄せてますけど。最初はまったく子どもの扱いが苦手、だんだんと子どもとのコミュニケーションの取り方を覚えていく過程が丁寧に描かれていて、シャロン・ストーンにピッタリのステキな脚本だ。

 監督は『狼たちの午後』とか『セルピコ』のシドニー・ルメットであり、さすがだなあ、と思う。なんせ『12 人の怒れる男』の監督だからもう 40 年以上もずっと第一線でがんばっているのだ。こんな監督いないぜ。今回、子連れのシャロン・ストーンがニューヨークをウロウロするのを望遠でとらえたロケ撮影は S. ルメットならではの雰囲気があり、それだけでボクはオッケーなのであった。

 近頃の映画には珍しくアクションが地味なのも良い。リアルである。カーチェイスもあり、これといって派手なものぢゃあないんだが緊張感満点。急停車した車のフロントグラスに頭をぶつけちゃうのをサッと見せるところがリアル。うまい。シャロン・ストーンの『グロリア』というと、往年の傑作アクションを現代的な、なんでもかんでも爆発しまくりのローラーコースターアクションムーヴィーに作りかえたような映画を予想してしまうが、オリジナルよりずっと地味でタイトな映画ぢゃないだろうか。久しぶりのジョージ C. スコットが出てます。めちゃくちゃ老けてる。

「シャロン・ストーン? なんか演技が一本調子でヤダな」なんてすかしたことをいうヤツは、この映画のおもしろさは一生わからないだろうから、一生見なくてよろしい。

BABA Original: 1999-Sep-18;

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