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Movie Review 1999・10月13日(WED.)

双生児

 塚本晋也監督の映画は『鉄男』『鉄男 2』『妖怪ハンター ヒルコ』などをボクは見ており、『妖怪ハンター…』はショボさはありつつもジュリー主演でもあるし、見応えのある活劇であったと思う。が、最近作は未見であるし、『鉄男』もピンと来なかったので「塚本ワールド」うんぬんということを語る資格はない。

 登場人物眉毛無し、女性はシイタケのような髪型、とにかくボソボソつぶやくようにしゃべる、ってんでなかなかに気合いの入った画面づくりだ。しかしながら編集・撮影も塚本晋也担当らしいが、移動の手持ちカメラが多用されると自主制作出身監督の匂いがプーンと立ちこめ、カメラ固定で撮っているカットはなかなか良いのに困ったものだ、などと思ったり。刑事が出てこないのも個人的に残念。マユナシ刑事(デカ)が見られるか? とか思ったのだが。(何を言っているのかわかりませんね)

 モックンとりょうの仲良し夫婦が、「貧民窟」の人間をどのように見るか? をめぐって初めてであろう夫婦ゲンカの後、モックンの双子が出現する。見ようによっては、「貧民窟」の人間を差別するモックンと、「いや、彼らも同じ人間なんだよ」と差別意識を克服しようとするモックン、という葛藤が生み出したドッペルゲンガーの物語、といえなくもない。さまざまなレベルの物語が層を成す映画を指向しているように思えるが、後にドッペルゲンガーであった、という見方はりょうの回想によって否定されてしまうので、なんか中途半端です。

「貧民窟」の人々が原色のボロ切れをまとって実におしゃれさんで、いかにもフランス人あたりが喜びそうな映画だ。なんか、『影武者』以降、晩年の黒澤明作品のシックリ来ない感じに似ている。結局のところターゲットはその辺なのだろう。「国際映画祭向け」映画、という感じ。りょうのセリフ回しが少々痛い感じであっても、日本語のセリフ回しの機微を解せぬ欧米人をターゲットにしている限りは全然オッケーってことだろう。

 なにがなんだかよくわからない映画で、普通ならボロカスチョンに書きたいところだが、ボクは映画俳優としてのモックンが大好きで、今回はとりあえずモックンの二役がメチャクチャかっこいいのでオッケー。モックン好きにはオススメなり。

BABA Original: 1999-Jan-13;

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