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Book Review 1999・11月30日(TUE.)

本が好き、
 悪口言うのはもっと好き

 高島俊男

 もちろん読書とは悪徳である。調べ物などで必要にかられて本を読む行為は関係がない。必要もないのに本を読む事そのものが好きだなどというのが悪徳である。恥知らずな行為である。もっといえば下劣な行為である。世の中にはそこらへんを勘違いしている人が多くて、「読書が趣味」などと平気な顔をして言ったり、「本が好きなんて偉い」とか言ったりする。しかし読書は決して人に自慢できるようなものではない。どれぐらい自慢できないかというと、「悪口」ぐらい自慢できない。

 普通は「悪口が好き」などと言えば嫌がられるであろう。自分が陰で何を言われているか分かったもんじゃないからだ。そして実際何を言われているか分かったもんじゃない。悪口好きな人間は、まず確実に全ての人の悪口を言う。これは悪口好きの私が保証する。会ってる時はどんなに誉めていても、裏に廻れば無茶苦茶に言う。これこそが悪口の醍醐味だからだ。そして本を読むという行為は、この悪口に等しい。本に耽溺するという事それ自体が、世界全体の悪口をいうのと同じ行為だからだ。だから本好きの人間など決して信用してはならない。

 ところでこの本の著者の高島俊男である。題名にぬけぬけと「本が好き」などと書いているぐらいなのでとんでもない野郎だ。さらに「悪口言うのはもっと好き」と続くのだから、もう何をかいわんやである。私と同じ種類の人間ではないか! しかし決定的に違うのは著者の教養の深さである。その圧倒的な教養に私は陶然とした。私もこれぐらい教養があれば、もっと強烈な悪口が言えるのに、と。私のような浅学では、どうも悪口が薄っぺらになるのだ。

 よし! 勉強のやり直しだ! と気合いを入れ直した。最近読んだ中では最も刺激され、また読む楽しみを味わった本であった。

オガケン Original: 1999-Nov-30;

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