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Movie Review 1999・12月15日(WED.)

映画の見方の分からない人
が見た「テオレマ

 ついに三枚綴りチケットもラスト一枚、そしてパゾリーニ映画祭も最終日。あー、やっと終わるとほっとしながらみなみ会館へ向かう。

 にしても奇跡の丘を最終回に見て、その翌日一発目から見るパゾリーニはもう精神衛生上よくない事請け合い! おかげさんで、2 、3 日はテンションが上がらず物事のはかどらないことはかどらないこと。

 あらすじについては以前店主BABA さんの書いた通り、主人公がある家庭に入り全員の神経をおかしくして去っていく。レビューを読んでたもんでパゾリーニの上流階級への憎悪というか嫌悪を感じ取る事ができた。

 表面的にはあの家族は何も悪い事をしていない。家族は仲がよさげで、友人にも恵まれている風である。世間一般でいう理想の家族像みたいなものだろうか。それをわざわざ崩壊させようっていうんだから、パゾリーニはよっぽど嫌な目にでもあっているのか?

 悪さをしている金持ちをおとしめようという勧善懲悪の分かりやすい話にしてこないところに僕は妙にリアリティーを感じた。しかし主人公に家族への悪意は見られない、それどころか彼は家族を愛しているように見える。彼はパゾリーニの権化の様な存在だと思っていたから、そのあたりは疑問が残る。金持ちを潰すには天使の顔をして蝕んでいけということか?

 そういやあ悪魔って実はめちゃめちゃキレイな姿をしているってどこかで聞いた事があるな、彼はそういう存在なんだろうか。それを確かめる間もなく彼は去り家庭は崩壊してしまったわけだから、そのあたりの真偽のほどは確かめようもないのだがどうなんだろう。

 そんなことに頭を悩ませながら観ていると、『アポロンの地獄』の伝令役、そして奇跡の丘でのチョイ役をやった彼がまた出ているではないか! 今度はポストマンの役で登場、しかしこれもまたチョイ役もええとこ。お手伝いさんに声をかけられて喜ぶが、またすぐにシカトされてすごすごと引き下がる哀れな姿、かといって彼にまでシリアスな役を演じられてしまった日には、世の中には神も仏もない! と思ってしまう事だろう。

 このパゾリーニの厳しい映画の中で、いつもアホっぽい笑顔を振りまく彼の存在は僕にとっては一服の清涼剤、いやそれ以上の存在かも。かといってパゾリーニが彼みたいな無垢な存在を置く事で、映画全体のバランスをとっているって考えるのも普通過ぎるなあ。彼もまたパゾリーニの望む世界を体現している人間なのか?

 うーん、どうも人間不振になってきたぞ。

 にしてもこの二日だけで随分心労がかさんでしまった。こんな日はジャッキーの映画でも見てすっきりしたい。しばらくはこのような脳を侵食するような映画は遠慮したいものだ、この調子じゃあ神経がいくつあっても足りないぞ。

 ソドムの市のビデオはもっと元気になってからにしよう。ほんまここ 2 週間でパゾリーニを見まくったオバヤマの皆さんには驚愕するばかり。

おいしん Original: 1999-Dec-15;

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