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Movie Review 1999・8月20日(FRI.)

アイズ・ワイド・シャット

 やりたい事は非常によく分かるような気がする。が、とてもそれが成功しているようには思えない。とはいうものの、あのキューブリックが最後まで編集しなかった(できなかった)という事実を思うと、失敗作というのでもない。とにかく非常に面白そうなショットに溢れているだけに、もどかしい思いに悩まされた。

 キューブリックは近代というかブルジョア文化の行き着いた果て、みたいなものを描きたかったのだと思う。故に舞台は NY だし、主役はソーホーの画廊で働いていた妻を持つ医師、テーマはセックス、と「見る」こと。なんてブルジョア的! さらに付け加えるなら、演じる俳優はハリウッドのスター夫婦、でターゲットとなる観客はというと、これこそ典型的なブルジョア文化の体現者達なんだな。この映画に出てくるビクターのような真の上流階級も、娼婦ドミノに代表される下層階級も、この映画を映画館まで観に来ることはありえない。今どき映画館まで封切り映画をみにくるなど死ぬほどブルジョア的だ。私がこの映画を観た SY 松竹の周りにも、コギャルやスケーター達がたむろしていたが、彼・彼女らが 1800 円も払ってこの映画をみにくる事はありえないだろう。ブルジョアというのは常に性的妄想を介して非日常とつながろうとし、でも結果として踏み切ることができず「見る」だけになる。

 キューブリックはこの忌むべきブルジョア性を撃とうとしたのだと思う。しかし先に述べたように、それは不発に終わっているようだ。映画が終わった瞬間、つまりエンドロールがはじまる直前に、観客席には、あれ? 終わり?? といったかんじの小さな笑いが起こった。残念ながら私もそれは正しい反応の仕方だと思ったのだった。

オガケン Original: 1999-Aug-20;

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