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Movie Review 1999・8月4日(WED.)

アドレナリンは出ないが
ドーパミンは出たぞ
「アドレナリン・ドライブ

 人がほめない映画を好んで見るアマノジャクな性向のある私なので期待して見たのであるが、たいそう面白かった。今日(8 月 4 日)でみなみ会館の上映が終わっちゃったんだけど、機会があれば見ていただきたい。

 ひょんなことからヤクザの裏金約 2 億円を持ち逃げしたさえないレンタカー店勤務・安藤忠信君とさえない看護婦・石田ひかりさんがヤクザの手下やその兄貴の追っ手を振り払いつつ案の上恋に落ちたりなんかしてどうこう、という紹介するのも面倒くさいお話で傑作『鮫肌男と桃尻娘』と似たりよったり。ぢゃあつまんないかと言えばそんなことはなくディテールに神はやどるとはよく言ったものでこの際お話はどうでも良い。名作『がんばっていきまっしょい』でもヌケた演技を見せてくれた真野きりなさんのなんとも名状しがたいセリフ回しや「ジョビジョバ」なるコントグループだと漏れ聞くところのヤクザのチンピラたちが素晴らしく、安藤くんや石田さんの普段と異なる芸風も見せていただき、退屈しない、というより傑作。

 どうでも良いあらすじとは言うものの近頃の映画には珍しくちゃんと伏線も効いており、事件に巻き込まれた男女が恋に落ちていくというヒッチコックあたりに起源を発しアメリカ映画が得意とするものの日本映画ではなかなかに成功しづらい映画の王道を行く映画であり、うまい、と思う。

 登場人物たちは運命に身をまかせつつも行動が実に素早い。葛藤、英語で言えば Conflict が存在しないんだな。「ここでこの金を持ちだせばこういう結果が予想されるけれど持っていって良いものかどうか?」とか「この患者は重病人でありコレコレの金額を提示してオレを外に出してくれ、と申しておるが、死んぢゃったら元も子もないしどうする?」とか普通の演出であれば俳優さんは眉間にシワを寄せたり脂汗を流したりハタマタ頭をポリポリ掻いたりして悩むと思うんですよ。それがまったくない。ギリギリ胃が痛くなる葛藤がないとブワッとアドレナリンが噴出する瞬間も生まれないわけで、これをこの映画の美徳と見るか、欠点と見るかは見る人次第であります。ボクはオッケー。ヴェリークールと思います。

 確かに『お受験』の矢沢英吉の走りの方が握りコブシ感はあったと思うけど『アドレナリン・ドライブ』はひとときの快楽に身をまかせるには持ってこいの映画なのでありました。

BABA
Original: 1999-Aug-04;

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