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 Movie Review 2005年7月12日(Tue.)

HINOKIO

 ロボット越しのラブストーリー〜会ってみたいんだ本当の君に。ババーン!

 きょうはみんなに新しい仲間を紹介します、とクラスにやってきたのはなんとロボット! えーーーっ! ロボットと申しましても『アイ・ロボット』みたくロボット三原則に従い人工知能で自律的に行動するでなく、リモート・コントロールで操作されるヒノキオ、なぜに“ヒノキオ”かと申しますと、ネタバレですが軽量化のため一部パーツに“ヒノキ”が使われていて、ついたあだ名がヒノキオ、ひきこもり少年=サトルが操作するヒノキオと、クラスのガキ大将ジュンの、奇妙な友情というかリトル・ロマンスを描きます。

 まずもって驚くべきはヒノキオの実在感で、CGとプロップ(原寸大モデル)を使い分けて撮影されたと思われますが、CGでなければ撮れない映像とわかっていても、今そこに存在すると思ってしまうリアリティがあります。動きも気色よく、悪ガキ三人組の舎弟となってランドセルを持たされ、ちょこちょこ小走りでついていく動きは哀愁ただよい、あるいは一転、見事なカンフーを見せるコントラストも鮮やか、茫然と感動しました。

 監督はこれがデヴュー作の秋山貴彦、20年にわたって温められた構想だそうで、『河童』、『ACRI』、映画『FINAL FANTASY』などの作品でヴィジュアル・エフェクツ監督をしながらズッと『HINOKIO』をいかに映像化するか考えまくったに違いない。『アイ・ロボット』にも決して負けない、世界最高水準のクオリティです。…って、素人目ですが、非CGシーンもHDカメラで撮られているのか、画質が今ひとつなんですけど、物語にひきこまれて気にならなくなるのであった。

 脚本も見事です。何をおいてもガキ大将ジュンのキャラ立ちが素晴らしく、ヒノキオをいじめる者として登場し、やがて理解しあう同士となる。手塚治虫が何度もくり返した、とあるヒネリも効果的(私は「ひょっとしたら…?」とは思いましたが、度肝を抜かれました)、過去の理不尽な体験も匂わされ、現在の家庭環境も複雑、陰翳の濃いキャラとなっております。

 ジュンを演じる俳優さんもバチグンの好演、ある年齢の俳優さんが、ピッタリの役柄を得て最高の演技を見せる、映画の奇蹟が存在します。

 ひきこもり少年が操作するヒノキオとは、インターネットのヴァーチャル空間でのハンドルネームみたいなもので、ネットに没頭するひきこもりな人、あるいは、ゲームと現実の区別がつかなくなったゲーム脳の人が、いかに現実とおりあっていくか? また、シヴィアな状況におかれて苦しむ少年少女に、大人はどんな言葉をかければよいのか? どんな言葉をかけてはいけないのか? みたいなところも描かれ、現実とゲームが奇妙なリンクを見せるところは村上春樹の小説みたいですし、ロマンチックなSFファンタジーとは一線を画しております。

 さらに私が素晴らしい! と一人ごちたのは、ジュンがサトルを探すのに自転車を使うところ、汗だくで坂を登り切ると、おばけ煙突が一本に見える! 幼少の頃、自転車で冒険にでかけたことがある人は、誰しも茫然と感動するのではないでしょうか。自転車最高。

 前半、ヒノキオの大活躍と大失敗をもっともっとオモシロおかしく描かないと小学生諸君は退屈してしまうかも? と思わないではないですが、ラストシーンもアッと驚き、涙・涙で大感動、中村雅俊、原沙知絵、原田美枝子、牧瀬里穂も子供に負けない好演、バチグンのオススメです。

☆☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Jul-11;