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 Movie Review 2005年1月24日(Mon.)

オーシャンズ12

 今度の11(イレブン)は12人でキメる。ババーン! ソダー・バーグ監督最新作、「オーシャンズ」シリーズ12作目、前作『オーシャンズ11』あたりからメンバー多過ぎでしたが懲りずに一人増員。かわいそうにドン・チードル、バーニー・マック、カール・ライナーなどは一応出てますよー、という扱い、少人数だった頃がなつかしい…。

 もし、さらに続編が作られるなら『オーシャンズ13』では縁起が悪い。ぜひ『オーシャンズ10』『オーシャンズ9』『オーシャンズ8』と、リストラ減員の方向で検討していただきたいものです。

 それはともかく、お正月の「オールスター新春隠し芸大会」的な、アメリカ映画界という村落共同体の仲良しさんたちが楽しんで作った雰囲気ありあり、今回はローマ、アムステルダム、パリの海外旅行付き、一同会してのパーティもあり、いやはやスターは素敵な商売ですな、とご同慶のいたりでございます。

 そんなことはどうでもよくて、前作同様、隙だらけ・穴だらけの犯罪計画を、ソダー・バーグお得意の手持ちカメラ、ジャンプカット編集、時系列の攪乱、スーパークールな音楽で誤魔化す大作戦、「説明不足」「わかりにくい」「内輪受け」と苦情が来るのは承知の上、人気スターが多数集結しているのに(集結させているから?)、好き勝手・やりたい放題です。わかりやすさが信条のアメリカ映画にあって、「わかりにくくて結構!」な仕上がりが痛快。

 今回は舞台がヨーロッパ、スタイリッシュでヨーロピアンな雰囲気漂う、音楽がカッコいい犯罪コメディとなっております。不条理なギャグもあって、ちょっと『ルパン三世』(最初のテレヴィ版)やジョルジュ・ロートネル監督作品(『女王陛下のダイナマイト』とか)を想起したのは私だけではないでしょう。…私だけですか? すいません。

 たとえば、駆け出し犯罪者マット・デイモン。チーム参謀格のジョージ・クルーニー+ブラピがマツイさんから犯罪斡旋してもらう場に、無理して同席させてもらいます。ベテラン/プロ犯罪者たちは隠語でしゃべるので、マット・デイモンにはさっぱり会話内容わからず、ついポエム(レッド・ツェッペリンの歌詞だそうです)を口走ってしまうギャグは秀逸でございますね。

 また、オーシャンズ一味ほとんどがお縄を頂戴してしまい、残りメンバーでなんとか宝石を盗まねばならない! と立てた計画は、「んなアホな」とツッコミ入れたくなる掟破りのトンチ、さらに偶然×××(ネタバレ自粛)が現れ、「楽屋オチにもほどがある!」とツッコミ必至。頭がグネグネになる感じで素晴らしい。

 映画と現実の境界を攪乱し、虚構の世界に没入している観客に冷水浴びせかけるネタで、いっぺんに白けてしまった方も多いのではないでしょうか? ソダー・バーグ以前の作品『フル・フロンタル』もそういう感じのメタフィクション…ってよくわかりませんが、本来サラッと流すべき「楽屋オチ」を、これ見よがしの大ネタにしてしまうのがソダー・バーグの持ち味、かも知れません。知らん。

 自分が撮りたいネタを好きなように撮って、観客に媚びず、それどころか感情移入をブチブチ断ち切るクールな作風は、ちょっとタランティーノに似ておりますね。アカデミー賞監督になってもインデペンデント魂を失わず、その意気やよし。「大スター多数共演アメリカ娯楽映画」には決して仕上げず、自主製作風のヘタウマ撮影・編集で「ヨーロッパ犯罪映画」へのオマージュを青臭く捧げております。ネタバレですが、カメオ出演でアルバート・フィニーが登場するシーンは「ヨーロッパ犯罪映画」風味が横溢し、茫然と感動してしまいました。

 はっきりいって、「ジュリア・ロバーツ」ネタ以降は、なんでもありな感じ、警察につかまったオーシャンズ一味が釈放されるトンチや、「アメリカ VS フランス」の泥棒対決――「チーム VS 個人」「やっつけ仕事 VS アート」の対決でもある――の結末もお粗末、この辺がビシッと決まっておれば傑作になったはず。

 とりあえず前作同様、ストーリーは阿呆ですが、クールなソダー・バーグタッチをお楽しみいただければよろしいかと存じます。前作を見ていないとサッパリ意味不明でしょうし、万一「大スター出演アメリカ娯楽映画」を期待するとガッカリでしょうし、ソダー・バーグ監督作としてもユルユルですけど、オススメです。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA
Original: 2005-Jan-20;