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 Movie Review 2005年4月25日(Mon.)

アビエイター

 すべての夢をつかんだ時、いったい何が見えるのだろう。ババーン! おどろき桃の木20世紀、アメリカ映画業界+航空業界に旋風を巻き起こした実在の大富豪ハワード・ヒューズ氏の半生を描きます。

 金持ちのぼんぼんハワード・ヒューズ氏は『犯罪都市/フロント・ページ』(The Front Page, 1931年/ルイス・マイルストン監督)――後に『ヒズ・ガール・フライデー』『フロント・ページ』としてリメイクされる――や、『暗黒街の顔役』(Scarface, 1932年/ハワード・ホークス監督)――後に『スカーフェイス』としてリメイクされる――を製作、映画業界で大成功、でもやっぱり自分で好きなように撮りたい! と『地獄の天使』の撮影から本編の始まり、金に糸目をまるでつけない映画製作ぶりが再現されるあたりは、さすが映画史に造詣の深いマーティン・スコセッシ監督である、うむ。って、当初『コラテラル』のマイケル・マン監督で企画されてたそうですが。

 ヒューズ氏の映画づくりは単なる金持ちの道楽ではありません。「うーーむ、空中戦のシーンがどーもモッチャリしてるなぁ…。はっ! そーだ、速さを比較する物が映ってないからだ! よーし! 雲が映るように全部撮り直しだ!!」……周囲をゲッソリさせまくるハワード・ヒューズ氏、映画にしても、飛行機にしても、常に最高を求め続けた完璧主義者、そういう完璧主義者が潤沢な資金を得ての無敵の映画づくり、…ってそれこそが最高の「金持ちの道楽」かもしれませんね。

 そして私、ハワード・ヒューズ氏といえば「映画製作もした大金持ち」くらいの認識を大いに改めたのでした。

 自社のプロダクツに異常なこだわりを見せる点で、Apple社CEOスティーヴ・ジョブズ氏を彷彿とさせ、「強烈な美意識を持つ会社のトップ」とは、なかなかにアメリカ的な存在なのかもしれませんね。と適当なことをごちつつ、映画ではヒューズ氏を異常な潔癖性として描いており、[完璧主義]と[潔癖性]はコインの表裏なのかもしれません。と、さらに適当なことを一人ごちました。

 色んな面を持つヒューズ氏ですが、「アビエイター Aviator」とは[飛行家・飛行士]のこと、つまりハワード・ヒューズ氏とは、何にも増して[飛行家・飛行士]であった、ちゅうことでヒューズ氏が自ら設計にガンガン口出しして製作される当時最新鋭の飛行機と、その飛行シーンが見事に再現されます。

 マーティン・スコセッシ監督はあんまり特撮を前面に出した作品は撮ってこなかったのですけど、飛行シーン、墜落シーンはド迫力、私は飛行機マニアではないのでよくわかりませんけど、きっとマニアの方は、涙・涙なのではないかしら?

 美術は、フェリーニやパゾリーニ作品多くを担当したダンテ・フェレッティ、最高水準の仕事でございますね。

 映画と飛行機の世界で金にあかせてやりたい放題、快男児ハワード・ヒューズ氏の、どはずれた冒険をテンポ良く紹介する前半は、『グッドフェローズ』『カジノ』『クンドゥン』など、クロニクル(年代記)語りでは天下一品スコセッシ、加えてセルマ・スクーンメイカーの編集も冴えわたって快調そのもの、一転、ヒューズ氏の神経が変調をきたしてからは、プロデューサーも兼ねるデカプリオ、ここいちばん演技力の見せ所、じっくりねっとり[頭のおかしい人]演技を炸裂させます。ロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソンなどに次いで、[頭のおかしい人]演技が似合うデカプリオなのでした。

 さらに再び転調、公聴会での大逆転劇→超巨大飛行機のテイクオフ、快男児の復活劇とあいなりますが、ついさっきまでモサモサひきこもっていた頭のおかしい人が、なぜ、いきなり弁舌さわやかになれるのかよくわからず、ここのつながり具合が惜しいな、と思いました。

 とはいえ観賞後にスッキリしない感が残るのはスコセッシ監督作では常のこと、150億円の超大作でも、スコセッシの作家性が色濃くにじみ出ております。ちなみにエンドクレジットでは、『ハワード・ヒューズ』という古い(と思われる)ブルースの曲が流されまして、さすが「ブルース・ムーヴィー・プロジェクト」の監修者でございますね。

 ともかく、スタッフ+キャストにそれぞれ超一流どころがそろえられ、個々のシーンの見応えはバチグン、アメリカ航空業界・映画業界の裏幕もかいま見られるし、『地獄の天使』メイキング裏話も面白く、上映時間5時間くらいでヒューズ氏の死ぬ間際まで描いて欲しかった、と思わないではないですがオススメです。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Apr-26;