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 Movie Review 2005年4月7日(Thu.)

ローレライ

 祖国を守るため、彼女を守るしかなかった…。ババーン! この『ローレライ』、続いて『亡国のイージス』『戦国自衛隊 1549』と、すべて福井晴敏原作(私はすべて未読)による軍隊・自衛隊ものがぞくぞく映画化。私は、アメリカ主導による憲法改正(改悪)をもくろんでの、映画による世論操作の陰謀を実感せずにはいられないのであった…。

 それはともかくその先鋒『ローレライ』、監督は、なんと! 樋口真嗣ではないですか!? …って誰に問いかけているのかよくわかりませんが、樋口真嗣といえば、『ガメラIII 邪神〈イリス〉覚醒』で、最高に衝撃的な特撮映像を作り上げた特撮監督さん。今回、ついに監督デビュー!! CGが安い仕上がりとはいえ、ヴィジュアルの面白さ・カッコよさは圧倒的でございます。

 特撮場面のみならず、潜水艦のセットなんかも素晴らしく、日本の男優さんは軍人とヤクザを演じたら天下一品と申しますけど、役所広司ら乗組員の演技も上々、また相対するアメリカ軍の描き方も、[日本映画に登場する安めのアメリカ人]の域を、軽々と超えた説得力あるものに仕上がっており、樋口真嗣の初監督デビューを諸手をあげて祝福したい。ブラボー。

 …いや、やはり批判すべきところは批判すべきで、ここで描かれた「歴史偽造の罪」を私は見過ごすことはできません。

 お話はというと、広島への原子爆弾投下直後、役所広司は密命を受け、ドイツから譲られた最先端潜水艦「伊507」で極秘作戦を敢行する…というもの。そういう架空の物語を、歴史的事実のすきまにうまくはめこめば、すこぶる面白い話になったはず。

 しかし、どうにも時代考証やら何やらがメチャクチャで、映像的にはバチグン、お話でガックリ、という印象です。

 若干ネタバレですが、時代考証のいい加減さの些末な一例を挙げておくと、当時[超能力の実用化]には未だ成功していなかったはずです。

「ナチスのォォォォォォ、科学力はァァァァァァ、世界一ィィィィィィィィィィ!」でしたので、誤解されがちなところですが、[超能力(のように見えるもの)の実用化]に成功するのは、私がキャッチした電波によれば、2067年のはず(グレッグ・イーガン著『宇宙消失』参照)。「第三の原爆投下阻止のための極秘作戦」というだけで十分妄想的ファンタジーですので、それ以外はとことんリアルでなければならない、と思うのですけど、細かな点とはいえ、こういう時代考証・科学考証のミスは致命的です。

 …というか、「寄せ集めの乗組員」が、ドイツから頂戴した最先端潜水艦をいきなり動かせているのも不思議な話です。また、役所広司らが原爆を「原子爆弾」と呼ぶのも違和感があります。「新型爆弾」と呼称されていたのでは? あるいは、登場人物の多くが、当時流行の髪型=「丸坊主」にしていないのも、嘘くさい印象です。

 そういうディテイルのヘンテコさのみならず、話もスッキリしない感じです。以下、ネタバレ。

 役所広司艦長は「特攻は、マンパワー(人的資源)の浪費なので反対」という、現代的・合理的精神の持ち主です。しかるに結局は、犠牲的・自殺的作戦を敢行するのであった。

 これは、役所広司艦長が批判する[特攻]とどこが違うのでしょうか?

「大人が始めた戦争は、大人が責任を取るべきだ」と、若い乗務員を離脱させるあたりが[特攻]とは違うぞ、ということなのでしょうか?

「責任を取る」ためには、何が何でも生き残らねばならない、と私などは思うのです。たとえ、虜囚の辱めを受けることになっても、生き残るべきだと思うのです。この映画で私がいちばん偉い! というか、共感を覚えたのは、元海軍高官・堤真一にボロカスに言われながらも、ジッと耐えた伊武雅刀だったりするのですけど、それはともかく役所広司艦長は、生き残るために、[ローレライ]システムを最期まで徹底活用しなければならなかったのでは? と思うのであった。

 と、いうか、ローレライ・システムの最期があいまいだから、「映画のウソ」として成立していないのでは? ラスト、役所広司艦長らが「こんな兵器は、人間には必要ない!」と自らの手でローレライ・システムを破壊する、みたいなシーンがないので、画竜点睛を欠いた、みたいな? よくわかりません。

 また、いかに原爆投下を阻止するためとはいえ、B29乗務員を殺した罪に対する反省・省察がまったくないのも気にかかるところです。B29がドカンと爆発して気分爽快! よし! 日本に帰るぞ! みたいな、人間の生命がとことん安く扱われているのも、気色悪いところでした。片翼だけ吹き飛ばして、B29乗務員はパラシュートで脱出させる、くらいの配慮が欲しいところです。

 と、いうわけで、ビジュアル的・演出的には最高の部類なのですけれど、ストーリー/時代考証に引っかかりを感じるところ多数。とりあえずヒットしてますので、樋口真嗣監督に次回作は必ずある! とワクワクですが、次回は、もうちょっとまともな脚本/ストーリーで勝負していただきたいな、と思いました。

 話に色々引っかかり・気持ち悪いところ多く、『ロング・エンゲージメント』のリアルでストレートな反戦メッセージに比べると、くだらなさ炸裂なんですが、私がアメリカ映画のプロデューサーなら、即、樋口真嗣と契約する! という感じでオススメです。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2005-Apr-7;