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 Movie Review 2004・1月29日(THU.)

バレット・モンク

 そこの坊主、まるで弾丸! そこの坊主、まるで弾丸! そこの坊主、まるで弾丸! 余りにカッコいい宣伝文句なのでくり返してみました。『弾丸坊主』と聞けば誰しも勝新太郎『不知火検校』みたいな破戒僧を連想されましょう。しかし原題は“Bulletproof Monk”=『防弾坊主』が正解で、映画の中身も「防弾」な感じでした。ってよくわかりません。ババーン!

 第二次大戦中、チベット奥地の僧院。世界を支配する力を秘めた巻物を、守る任務を引き継いだのはチョウ・ユンファ! そこへ、巻物を奪おうとやってきたのはナチス・ドイツ! ユンファはすんでのところで巻物を守るが、谷底へ真っ逆様…。どうです、メチャクチャ面白そうでしょ?

 で、話はいきなり現代のニューヨーク、スリを生業とする白人青年ショーン・ウィリアム・スコットは、変な東洋人につきまとわれます。そう、ナチスの残党に負われるチョウ・ユンファ! …なんと 60 年間逃げ回っていたのですが、見た目が昔のままなのは、巻物パワーで歳を取らないという設定です。どうです、メチャクチャ面白そうでしょ?

 さて、S ・W ・スコットの鮮やかなカンフーを見て、ユンファは彼こそ「巻物の守り手」後継者である、と目星を付けます。なぜに S ・W ・スコットがカンフーの名手なのか? 彼は中国映画専門館の屋根裏に住んでいて、毎夜映画の真似してカンフーの特訓を積んでいたのであった…。どうです、メチャクチャ面白そうでしょ? でしょ!?

 で、実際のところ、チョウ・ユンファは『グリーン・デスティニー』の武侠に茶目っ気加えてすこぶる魅力的、奇妙な師弟関係を結ぶショーン・ウィリアム・スコット(『アメリカン★パイ』のスティフラー)もカンフー・アクションをバッチリ決めてカッコつけるのが笑える感じ、少々トンチが効いた展開もあり、トンチの最高形態である「公案」的問答=「ホットドッグ用のパンは 10 個入り、ソーセージは 8 個入りなのはなぜか?」みたいな会話もあって、原作はアングラコミックだそうですが、とぼけた味わいある佳作に仕上がっている……と言いたいところですが、肝心要のアクション演出が厳しく、ジョン・ウー製作ですけど監督は MTV 出身のポール・ハンター、MTV チックにカットを割りまくって、せっかくのイカしたアクション振り付けが生かされず、いやオープニングの、断崖にかかった吊り橋でのアクションは、CG バレバレでいい感じなんですけどね。

 しかしこの作品は、形ばかり真似するアメリカ白人に、チョウ・ユンファが「東洋の心」を諭しながら、ヨーロッパの成れの果て=ナチスの残党と戦うという構図で、すなわち以下のように読める。西洋流で行き詰まったアメリカ映画は、小器用な MTV 監督を起用してカンフーの見た目を真似してきたけれども、やはり魂の部分を学ばなければダメだ、ようやく気づいたけれども力及ばず、みたいな?

 そんなことはどうでもよく、中国映画専門館の館主がなぜか日本人マコだったり、クライマックス、元ナチスのお爺さんが巻物パワーで無敵になって、ナチ制服姿で暴れまくるのが素晴らしいです。密かに脳をスキャンして思考を読みとるマシンを発明しており、ここで「ナチスのォォォォォォ、科学力はァァァァァァ、世界一ィィィィィィィィィィ!」と叫んでいただくと大傑作になった、と思うのですが。

 香港映画に比べれば随分とつまらないのですが、最近の MTV 出身監督によるアメリカ製アクションではだいぶんマシ。ポール・ハンター監督、要チェックでございます。

☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA
Original: 2003-Jan-28;

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