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 Movie Review 2004・1月6日(TUE.)

ファインディング・ニモ
字幕版

 あけましておめでとうございます。今年も、レビューに釣られて思わず見に行ってしまい、ついついオパールでお茶しながらブーブー文句を言ってしまうみたいな? 役に立つのか立たないのか、よくわからないレビューをめざしますのでよろしくお願いします。


 それはともかく、潜水ダイヴァーに拉致・監禁された息子ニモを救え! 妻に先立たれたカクレクマノミお父さんマーリンの大冒険が始まる! ババーン!

 傑作『モンスターズ・インク』のピクサー社新作、今回もスリルと笑いの連続でおまけに泣けちゃう、という現代アメリカ最高水準のよくできたお話、しかも、息子を捜すお父さんマーリンと、水槽から脱出を試みる息子ニモ、という 2 世代 2 つの視点で物語が進行するので、親子両方が楽しめちゃう、お正月唯一、ご家族連れにピッタンコ、大ヒットでウハウハ、なのですが、思うに、父マーリンと息子ニモのカットバックで、スリル & サスペンスが少々弱くなっているのでは? 例えば親の世代がマーリンに感情移入するとすれば、ニモのパートは少々退屈、やはり『母をたずねて三千里』(カルピスこども劇場)や『捜索者』(ジョン・フォード監督)のように、探し求める対象の生存が終盤まで画面で確認されない方が、捜索者の執念とか勇気とか、この作品で言えばマーリンの父親としての成長テーマがより際だち、ハラハラドキドキ感も増したであろうに、と一人ごちたのでした。『ファインディング・ニモ』なワケですから、「ニモが何処そこにいる」と観客が了解した途端、グッと映画に引き込まれる感じが薄くなるわけでございます。

 しかし「ニモが、監禁されている水槽からいかに脱出するか?」も、「刑務所/収容所からの脱走もの」の味わいがあり捨てがたい。となると、例えば前半をマーリン、後半をニモという具合にバッサリ大胆に分けてみるとか、大人向けマーリン版『ファインディング・ニモ』と、子ども向けニモが大奮闘する『ファイティング・ニモ』に分けて公開するとかいかがでしょうか。

 って、そんなことはどうでもよくて、人間ダイヴァーに連れ去られたニモを、ちっぽけなクマノミちゃんマーリンが救い出すなど常識的に考えれば到底不可能、そういう不可能な課題をマーリンがいかにクリアするか? …ここがトンチの見せ所なのですが、水中メガネに書かれた“英語”の住所を頼りにニモを探すとは、トンチ不足を通りこして「そんな魚ァおらんやろ!?」とツッコミを入れざるを得ません。魚やら鳥やらが英語をしゃべるのはお約束としても、「英語が読める」のはお約束の範疇を越えているというか、英語を読める魚と読めない魚がいるならば、なぜ英語を読める魚と読めない魚がいるのか? そこんところをキッチリ描いていただかないとあかんのとちゃうん? 詰め甘くして「何でもあり」になって、やはり、スリル & サスペンスが損なわれているのでは? と私は、親子連れに囲まれながらソッと一人ごちたのでした。

 とはいえ、登場した瞬間にバシーッとキャラが立ちまくるキャラクターデザインが素晴らしいですし、わけても「健忘症の魚」ドリーのボケっぷりが見事なのでオススメです。「禁魚」を誓った鮫を、「AA(Alcoholics Anonymous:断酒会)」に見立てるとか、そういう「見立て」ギャグはピクサーの真骨頂でございますね。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Jan-5;

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