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 Movie Review 2004・2月12日(Wed.)

リクルート

『デアデビル』『フォーン・ブース』と快調コリン・ファレル演じるは、MIT 大学生プログラマー。無線でどんなコンピューターのモニターも乗っ取れるという、とんでもない(あり得ない?)プログラムを開発…って、そんなプログラムを開発したなら、大金持ちコースまっしぐら、何を血迷ったか、CIA リクルートマン=アル・パチーノの口車に乗って、CIA 入局試験を受けるのであった。ババーン!

 って、いきなり無茶な設定ですが、監督は『スピーシーズ』『ダンテズ・ピーク』など、ツッコミどころ満載作で定評あるロジャー・ドナルドソン、まあ、そんなこともあろうかと。

 で、意外や意外、そこそこ楽しめるのは、なんといってもアル・パチーノ教官による CIA 局員養成コース=「目に見えるものは何も信じるな! 自分の五感すら信じてはいけない、心の奥底で響く声だけが頼りだ!」…がモットーの授業過程が超面白く、たとえば「今日は実地研修だ!」、CIA マンは人心をたぶらかす術を磨かねばならないと、地元クラブに繰り出し女子をナンパせよ! みたいな訓練だったりして、国家公務員候補生がなんちゅう訓練しているのか、しかし CIA ならばさもありなん。コリン・ファレルもバレバレの罠にまんまと引っかかったりして、実に、ほのぼのとした気分にさせてくれる訓練が続くのであった。

 さて後半、CIA 局員養成コースを卒業したコリン・ファレル、アル・パチーノから内緒の任務を仰せつかります。

「CIA に潜入した二重スパイがいる。CIA が秘密裏に開発した“アイス 9”プログラムを盗み出そうとしている。それを防ぐんだ!!」

 …さて、カート・ヴォネガットの『猫のゆりかご』にちなんで命名された“アイス 9”とは? なんと、電源コードを伝わって伝染するコンピュータ・ウィルスであった! ババーン! …って、ありえない! と思うのですが、コリン・ファレル「…そ、そんなウィルス、防御不可能だ!!」って、コロリと信じてるし。

 こういう、何でも素直に信じてしまう CIA だからこそ、イラクに大量破壊兵器があると思いこんだのでしょうね。…って、「目に見えるものは何も信じるな!」という教えは何だったのでしょう。見てもいないもの信じてるし。見てもいないから信じているのか?

 さて、“アイス 9”が保存されている CIA 本部・科学技術部コンピュータは、外部と接続されておらず、フロッピードライブや MO ドライブもなく、コピーして持ち出すことは絶対不可能、という設定です。ネタバレですが、二重スパイがどのように“アイス 9”を持ち出すかというと……ミニディスクをキーボードの USB ポートに差し込んでコピーするのであった! ……観客・私はその手があったか! としばし呆然。このあたり、「CIA がいかに時代遅れの存在か?」という皮肉が効いておりますね。って違うか。

 どんでん返しが続いて、アッと驚いたことに予想通り、コリン・ファレルとアル・パチーノの師弟対決にもつれ込みます。客席に「どうでもいい感」がプーンと漂ってしまったのは否めないのですが、窮地に陥ったコリン・ファレルの切り抜け方に「うまい! 座布団 1 枚!」と言いたくなるトンチの香りがあるし、隠れたコリンを探しながら、アル・パチーノ例によって演説を始めてしまう! …そんな朗々と演説しながら追跡するヤツぁおらんやろ? と誰もがツッコむところですが、重症の「演説病」=アメリカ映画に昔からある病。映画のテーマを幼児にもわかるように、演説で説明してしまう高度な技法…ですので、お約束ということで。

 と、CIA の阿呆さ加減を描くと同時に「こんな組織なら、オラ入りてぇだ!」と入局希望者続出すること必至、題名通り、格好の CIA リクルート映画になっております。さあ、キミも CIA でレッツ・エスピオナージ! って感じでオススメです。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA
Original: 2003-Feb-9;

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