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 Movie Review 2004年12月22日(Wed.)

バッド・サンタ

 史上最悪のサンタクロースよりメリークリスマス!! ババーン! 傑作『ゴースト・ワールド』テリー・ツワイゴフ監督の新作は、ビリー・ボブ・ソーントン主演で送る「史上最悪サンタさん」のお話。「サンタさん」といっても本物のサンタさんでなく、歳末商戦デパートの客寄せサンタさんですのでご安心ください。

 以下ネタバレ含みます。

 客寄せサンタさん稼業のウィリー(ビリー・ボブ・ソーントン)、離婚歴2回、家族なし、子供の頃オヤジにプレゼントをねだったら拳固が飛んできたぜ…という悲惨な境遇、オヤジが教えてくれたのは…金庫破りだった! 飲み助で子供は大嫌い、大好きなのは×××ファック、タバコも吸いまくってシニカルこの上なしのサンタさん。

 そんなウィリーの相棒は、黒人で小人のマーカス(トニー・コックス。『ふたりの男とひとりの女』とか)、二人は毎年クリスマス商戦デパートにサンタさん+妖精コンビで雇われて、デパート内部を下調べ、金庫破りであらかせぎする極悪非道コンビでございます。

 自分が犯罪者であることを完全に受け入れている小人マーカスに対し、ウィリーはそんな稼業に嫌気がさしており、来年こそはマイアミでバーをオープンして堅気になるのだと決意、しかし毎年、年末にマーカスからお呼びがかかるとまたぞろサンタスーツに袖を通してしまうダメ男、というか『クラム』『ゴーストワールド』同様の、いい歳してどうしても普通の人の生活ができないモラトリアム「負け犬(Loser)」です。

 そんなウィリーが、デパートにやってきた少年キッド(ブレット・ケリー)と出会う。キッドはいつも青鼻たらした肥満児で、学校では「のろま」「デブ」とののしられいじめられる「負け犬」。

 みなさんご想像の通り、ウィリーとキッド、「負け犬」同士に友情が芽生え、ウィリーが改心する…というハートウォーミングなお話ですけれど、さすがテリー・ツワイゴフというか、脚本のグレン・フィカラ & ジョン・ラクア(『キャッツ & ドッグス』とか)の功績なのか、えんえんひどい話をくり広げる、PC(ポリティカル・コレクトネス)への徹底的な反抗っぷり、世間に対する呪いっぷりが素晴らしいです。

 たとえばデパート支配人がPC野郎で、ウィリーが試着室に女性をつれこむのを見とがめてクビにするぞ! といわれてウィリー、「もしおれたちをクビにしたらどうなると思う? 黒人、おまけに小人を不当解雇した! と騒ぐデモ隊がデパートを取り囲んじゃうぜ」と脅す卑劣さが最高でございます。

 ちなみにIMDbのTrivia for Bad Santaによると、「Fuck」という言葉が147回、「Shit」が34回など、計243回の不適当な言葉が使われたのは、クリスマス映画史上最高の記録であろう、とのこと。

 ウィリー、マーカスを始め、登場人物すべてがどこか妙で、ことにデパート警備主任=バーニー・マック(『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』とか)が最高です。ウィリーとマーカスの悪巧みに気づくのですが、「通報しないから分け前を半分よこせ」というハードボイルドなタフガイ、値切ろうとするマーカスとの交渉シーンは、劇場の観客三分の一が大爆笑! って観客数3人の弥生座で大笑いしたのは私だけです。…ショボン。

 それはともかく、たとえばキッドがウィリーに贈るプレゼント=木彫りの××××が素晴らしかったり、『クラム』『ゴーストワールド』をお楽しみいただけた方なら大丈夫、と思います。

 ビリー・ボブ・ソーントン、好演ですが、当初ツワイゴフ監督は、ビル・マーレイにオファーしたとか。ビル・マーレイのバッド・サンタもちょっと見たかったかも。

 そうそう、ビル・マーレイは出演依頼を一度は快諾したのに雲隠れしてしまったそうです。で、ビル・マーレイは何をしていたかというと、なんと『ロスト・イン・トランスレーション』に出演していたのである。うーむ。そりゃあ洟垂れ小僧と共演するより、『ゴーストワールド』から飛び出したスカーレット・ヨハンソンといい感じになる方がよいのでしょうけれど…ってよくわかりませんが、『素晴らしき哉! 人生』以来のクリスマス映画の傑作(かも?)、バチグンのオススメです。

☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2004-Dec-15