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 Movie Review 2003・9月25日(THU.)

サハラに舞う羽
サハラに舞う羽根

『エリザベス』のシェカール・カプール監督新作。カプール監督といえば、インド時代の『Mr.インディア』はバチグンに面白かったものの、その後イギリスに渡って撮った『エリザベス』は世評高かったものの私はよくわからなかったですけど、今回の新作はこれがまあ、なんちゅうか、トンデモ超大作でございます。

 19 世紀末、イギリスは世界の 4 分の 1 を植民地にしていました。主人公の若き士官ハリー(ヒース・レジャー)の部隊に出動命令が下ります。スーダンでの反乱を鎮圧せよ! しかし突然ハリーは除隊してしまいます。彼には、わざわざサハラ砂漠に戦いに行くことが女王の役に立つとは思えなかったのです。…って、まず、この主人公ハリーの行動がよくわからないのです。いままで軍隊内のラグビー大会では大ハッスルしておきながら、実戦には参加したくないなんて臆病者以外の何者でありましょうか? 軍人の父親は、ハリーに話しかけられても「はて? どなた様でしたかな?(お前なんか息子じゃない!)」とオトボケしちゃうんですけど、我々観客も「こんな情けない臆病者が主人公の映画を見に来てしまったとは…」と呆然と一人ごちざるをえません。

 ハリーは、同じ部隊の仲よし友達 3 人と、フィアンセ(ケイト・ハドソン)から「臆病者」の象徴=白い羽を送りつけられてしまいます。で、さすがの臆病者ハリーもそれは屈辱だったのか、わざわざ勝手にサハラに出かけ、スーダン現地人に溶け込み、イギリス軍が総崩れとなって友達の命が危ないときに偶然現れ、「羽を返しに来た!」、というお話。…「お前、何がしたいねん!」と思わず突っ込みを入れてしまいました。

 わけのわからないのはハリーだけではありません。ハリーのフィアンセ、ケイト・ハドソンも、ハリーが臆病者と知って彼の友達ジャックに急接近、ところがジャックが負傷して帰還、目が見えなくなったと知るや、再びハリーのもとへ「あなたのことを誤解していたわ…」とか何とか言って戻る…って、この節操の無さは『パールハーバー』のヒロインと似たりよったり、って、戦争は人間から節操を奪ってしまうのであった。

 と、わけのわからないこの映画ですが、ラストの帰還兵ジャックの演説で製作意図が明らかになります。曰く「我々軍人は、国や女王陛下のためでなく、友のために戦うのであります!!」ですと。つまり、イギリスに直接メリットがなくても、仲のいいお友達アメリカがイラクを攻撃するなら、一緒に戦わなければならないのですよ、という見え見えの国策映画でございます。それをインド人のシェカール・カプールに監督させればカモフラージュになるゾ、とほくそ笑む黒幕(誰?)の顔が目に浮かぶようです。製作はちなみにミラマックス。

 そんなことはどうでもよくて主人公の行動のワケのわからなさが笑えますのでオススメです。

(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Sep-23;

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