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 Movie Review 2003・9月12日(FRI.)

ドラゴン・ヘッド

『バタアシ金魚』『鮫肌男と桃尻娘』の望月峯太郎の漫画を、『らせん』『アナザヘブン』の飯田譲治が堂々の映画化です。修学旅行帰りの高校生テル君(妻夫木聡)を乗せた新幹線がトンネル内で大事故に遭遇。テル君が目覚めると、周りは死体だらけ。生き残ったのはテル君だけかも? …そう、テル君はアンブレイカブルなのです! ババーン!

 そんなネタバレはおいといて、原作ではコミックス 10 巻にわたってテル君と瀬戸さんの地獄めぐりが展開するのですけど、それを 2 時間ぱかしの映画にしたかてダイジェストにしかならず、そうすれば原作の魂(Soul)ともいうべき、「恐怖」が失われてしまうのは必至ではございませんか。ホラーというものは恐怖を感じさせるまでの段取り、緊張と緩和が必要で、例えばテル君の目覚め→トンネルからの脱出のパートだけでも 2 時間くらい費やして欲しいところ。と、いうか、原作の最初の方だけ 2 時間分そのまんま映画にすれば、さぞ傑作が誕生したかと存じます。原作という最良の絵コンテがあるのに、絵ヅラばかり模倣して勝手にカット割りするから、こんなにのんべんだらりんとした映画になってしまうのですな、と一人ごちました。

 恐怖をいかに克服するか? それは闇と仲良くすることなんですよ、みたいなテーマを描こうとしておりますが、そもそも闇の恐怖が描けているのですか? と問いつめたいところです。トンネルの中はたいそう暗いのですけど、画面まで暗くて粒子が荒れ荒れなのはいかがなものでしょうか。学生さんがよくお作りになられる露光不足の自主制作作品かと思いました。ただ画面を暗くしたからといって闇が描けるわけではないのが映画なのであります。

 例えば『地獄の黙示録』で、照明弾がスパーンと打ち上げられ、光が消えて現れる闇をビットリオ・ストラーロはいかに映像化したか? あるいは同じ V ・ストラーロ、『暗殺のオペラ』でマッチをすった後に現れる闇。光があってこそ闇がある。トンネルの中の真っ暗闇を映像化するなら、もう少しトンチをはたらかせていただきたい、と思うのであります。

 しかしながら見どころがないわけでなく、視覚効果デザインは平成『ガメラ』シリーズの樋口真嗣、ドカンと火山が大爆発する映像とか素晴らしく、廃墟の映像もよい感じ。また主演の妻夫木聡のナチュラルな演技は一服の清涼剤でございますね。

 原作を読んでない方はそれなりに楽しめるかもしれませんのでオススメ。ってか、どなたか再映画化してください。

(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Sep-9;

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