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 Movie Review 2003・6月4日(WED.)

アバウト・
シュミット

公式サイト: http://www.about-s.jp/

 長年勤めた保険会社を、目出度く定年退職したシュミット氏(ジャック・ニコルソン)。これまで彼の生活のすべては、会社と家庭だけだったのでしょう。退職して仕事を失い、家庭も失われて、ふと「自分は、もはや社会から必要とされていない人間ではないか?」「自分の人生は無意味だったのではないか?」と気づいてしまいます。シュミット氏は、人生の意味を求めて、旅に出るのであった。ババーン!

 監督・脚本のアレクサンダー・ペインは、黒澤明監督の『生きる』を参考にしたそうですが、『生きる』の志村喬と違って、シュミット氏はガンに侵されているわけではありません。しかし、元保険マンなんで、統計的に自分の余命が数年であることを知っている、という設定。

「死」を目前にしてアメリカ社会を見渡してみると、そこは茶番に充ち満ちております。キャンプ地で会った夫婦のふざけた挨拶や、娘の婚約者のふざけた髪型+ヒゲなど、「どうして、俺はこんなに孤独なのに、周りはふざけたヤツばかりなんだ!」ってよくわからない感じのシュミット氏のドタバタが笑いを誘います。

 シュミット氏の孤独感は、世間的には身勝手なものでしょう。言うなれば『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の老人版という感じです。しかし、巨大な茶番社会となった現代アメリカを目の当たりにすれば、シュミット氏の嘆きも、充分正当に思えてきます。なるほど、こういう人たちがアメリカの戦争を支持しているのだろうなあ、と呆然と一人ごちました。

 と、いうか、海を越えてやってきたピューリタンの子孫が、豊かさ・利潤を追求して、馬鹿げた国を作り上げてしまった。その馬鹿さ加減に鋭く気づいたのがシュミット氏であり、彼が結局見つけた、「人生を輝かせる方法」とは、実は、とてもとても簡単なことだった、という結末は、今のアメリカの国際政策に何が必要なのかを訴えているといえましょう。適当。

 そんなことはどうでもよく、かつては「セクシー・スター No.1」と呼ばれたこともあったジャック・ニコルソンが、いかにも臭そうな老人を好演。チョイ役のキャシー・ベイツに驚愕。「手紙」という形で、事実とは逆のこと語っていくモノローグなど脚本が秀逸。監督・脚本のアレクサンダー・ペインは要チェックでございますね。前作は『ハイスクール白書/優等生ギャルに気をつけろ!』(99 年劇場未公開・リース・ウィザースプーン主演)だそうで、見てみたいと思いました。

 バチグンのオススメ。人によって見方が随分変わると思いますけれども。

☆☆☆★★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-Jun-4;

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