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 Movie Review 2003・1月31日(FRI.)

ウェイキング・
ライフ

 夢から醒めて街を彷徨えば、行き交う人は口々に、実存がどう、とか、時間がどう、とか、夢がどう、とか、哲学的というかニューエイジ的というか、深遠かつ哲学的な話題をしゃべりまくっており、どうやらそれも夢でまた目覚めてみればまた夢で…という、無限退行(?)なお話。監督は、『恋人たちの距離〈ディスタンス〉』のリチャード・リンクレイター。

 劇中、ビリー・ワイルダーとルイ・マルの会話というのが紹介され、それがそのままこの映画の本質を言い当てております。どんなんかというと、ルイ・マルとビリー・ワイルダーがばったりと出会います。ルイ・マルは、250 万ドル(だったかな?)をかけて一本の映画を完成させたばかり。

ワイルダー
それはどんな映画なんだい?
ルイ・マル
「夢の中の夢」の話です。
ワイルダー
…250 万ドルをドブに捨てたね。

 こういう話を引用するとは、さては自虐系(何?)か? 脚本・監督のリチャード・リンクレイターが日頃色々思っていること、本で読んだ印象的なフレーズ、誰かに聞いた面白い話などを、ばったり出会う人にがんがんしゃべらせていくんですけど、低予算のプライヴェイト・フィルム風にこじんまりと製作しておれば、たいそう面白い映画になったかもしれません。それなのに、実写で撮ったフィルムをわざわざ膨大な人数のアニメーターがデジタルペイント処理した、といいますから豪勢なものですね。

 ていうか、「夢の中の夢」の話なんで、お話自体がファンタスティックな上に、屋上屋を架すというか、さらに風景が常にモゾモゾ動くとか、タッチがいちいち変わるとか、なんでそこまでファンタスティックを求めるのかなあ? というと、製作者のパーマー・ウエストとジョナ・スミスは『π』『レクイエム・フォー・ドリーム』の人だったのだ! ババーン! なるほどかようにファンタスティックをエスカレートさせるのも無理はない。『π』も『レクイエム〜』も『ウェイキング・ライフ』も、幻想/ドラッグをエスカレートさせてたら頭がおかしくなっちゃいましたー、って話で、お前ら、『ブレッド & ローズ』でも見て現実に戻ってきてください! と私は言いたい。

 大方には好評をもってうけとられているデジタルペイント処理ですが、せめて生身の俳優という“現実”が映し出される実写のままの方が、なんだかよくわからないけれどパワフルで面白い映画になった、というか、繰り出されるアーティスティックな映像よりも、俳優の肉声の方がよっぽどファンタスティックに感じられるから不思議なものですね。コンピュータ・グラフィックスがいかに映画を殺すか? という命題を考察するには良い材料かも知れませぬ。

 ともかく、とっぷりとトリップ感溢れる意欲作であり、もの凄く暇をもてあましている人、自分のやりたいことが見つからない人、自分探しの旅に出ようかと思っているロマンチックな方々、『π』『レクイエム・フォー・ドリーム』が好きな方々にはバチグンのオススメです。ジュリー・デルピー、イーサン・ホーク、スティーヴン・ソダーバーグ監督も出演しているので、映画好きな方にもオススメです。

☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

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