京都三条 カフェ・オパール Cafe Opal:Home

Home > Reviews > 03 > 0108
 Movie Review 2003・1月8日(WED.)

メルシィ!人生

 快作『奇人たちの晩餐会』の監督/脚本フランシス・ヴェベールの新作です。ヴェベールは、『Mr.レディ Mr.マダム』の脚本家でもあり、今どき希有な「この人ならばハズレなし!」な監督さんでございますね。左様、この監督さんには、優れた映画作家に必須にして、現代の多くの監督が失って久しい資質=「トンチ」があるのだ。適当。

 さて、今回のお話もトンチに満ちております。フランソワ・ピニョン(ダニエル・オートゥイユ)氏は、コンドームも製造するゴム会社勤務、可もなく不可もなく真面目だけが取り柄。リストラで会社を馘首にされかけ、女房に愛想をつかされ、息子にも疎まれる。もはや自殺でもするなりとアパートの窓から飛び降りかけたところ、隣人ベロンじいさん(ミシェル・オーモン)の一言で自殺を思いとどまる。ベロンじいさんが言うことには、「会社にリストラされない方法を教えよう」。果たしてベロンじいさんが授けたトンチとは? ババーン!

 トンチによって、会社の同僚たちはピニョンに注目します。「透明な存在」であったピニョンが、周囲から注目され噂されることによって、本人は以前となんら変わらないつもりでも、どんどん魅力的な存在に変貌していく。ピニョンも、他人の目を意識することで本人も気づかぬ内に変化しているのですね。「人から認知されたい」というのは、人間にとって基本的な欲望だそうですが、ゴシップであっても話題の中心になれば「気概」を持つ人間に生まれ変われる、というわけです。

 不況が続く日本でも、今にもリストラされそうな方が、多くおられると思いますが、この『メルシィ! 人生』を見ることで、必ず明るい展望が開けるに違いありません。知らん。

 そんな話はどうでもよく、噂に振りまわされるジェラール・ドパルデューがバチグンに可愛く、ピニョンのアパートに迷い込んでくる猫ちゃんも可愛いし、コンドーム工場のデザインもジャック・タチを彷彿とさせて可愛いのでオススメです。ってか、上映時間も 84 分と短めにまとめあげるフランシス・ヴェベールの手腕はバチグン、要チェックでございます。

☆☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA

レビュー目次