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 Movie Review 2003・12月3日(WED.)

シャンハイ・ナイト

 さて『キル・ビル』タランティーノ、「ハリウッド映画よりも、70 年代日本映画・香港映画の方がよっぽど面白い!」と宣言してこの方、「面白いアクションといえばハリウッド製」との偏見が世界規模で崩れつつあり(適当)、ハリウッドも危機感を強めて香港アクション導入に必死のパッチのようです。

 ジャッキー自身はハリウッド映画出演に、「危ないことさせてくれないからフラストレーションがたまる、危険なシーンの本番はスタントマンにやらせるんだ。リハーサルは自分でやっているのに!!」と不満たらたら消極的、しかも前作『シャンハイ・ヌーン』はチイとも面白くなかったのに、なぜに続編?

 しかし今回、ジャッキー自身がアクション・コレオグラファー(振り付け)を務め、さらになんと! 『HERO』でシビれさせてくれたドニー・イェンと初対決! ババーン!

 と、ワクワクしつつも、前作でまったくの不要キャラ=オーウェン・ウィルソンと再び共演、今回も「もっとジャッキーのアクションを見せなさい! キミのことはどうでもいいから」とご意見申し上げたい感じでございます。

 ジャッキーのアメリカ進出といえば、不充分ながらも成功例として『ラッシュ・アワー』シリーズがあり、アチラの相棒クリス・タッカーは、黒人/マイケル・ジャクソンのモノマネの持ちネタがあってシャベクリも出来る芸達者、アクションつなぎのノンビリシーンも退屈せずに見ることができますが、かたや O・ウィルソン、傲慢・好色・アホでマヌケなアメリカ白人ぶり全開で、そらジャッキーはいいヤツなんでしぶしぶキミにつきあってあげてますが、甘えるのもいい加減にしてください、世間はそんなに甘くないのです。O・ウィルソンが何やらどうでもいいことをグチャグチャしゃべって、ジャッキーアクションの割合が減って、ジャッキー VS ドニー・イェン夢の対決なんてアッという間に終わってしまうのですよ! プンスカ! ハリウッドのプロデューサーさんたちは映画のことは何もわからない阿呆ですから「中国系俳優だけでは客が呼べないというのがマーケッティング調査の結果だ、アメリカ人に馴染みのある俳優を共演させねば」との要らぬ配慮でしょうけど、ホントに要りません。少なくともラスト 30 分、延々ジャッキー VS ドニーで引っ張らないと。それに、いきなり対決なのもよろしくないです。事前に「ドニーの強さ」をキチンと描いてもらわないと。

 というか、シャーロック・ホームズ、チャップリンがどうした、というコネタは盛り込むのに、「バトルへの期待をどう盛り上げるか?」という肝心かなめの視点が欠如しているのである。笠原和夫「シナリオ骨法 十箇条」の英訳が待たれるところですね。

 例によって、ハリウッド流の撮影・編集で美しいアクションが台無しにされておりますが、今回はさすがジャッキー自身の振り付け、身の回りの小道具を駆使して組み立てるアクションは素晴らしいです。まさしくジャッキーこそ、チャップリンの遺産を正しく受け継いだ唯一の映画人である、と私は呆然と一人ごちたのでした。

 ジャッキー妹役のファン・ウォンのキビキビとしたカンフーも素晴らしく、それにつけてもオーウェン・ウィルソンは要らない、というか、ジャッキーの貴重な円熟期を、アメリカ映画出演で才能の浪費をさせていていいのか? 中国政府はワシントン条約でジャッキーを保護するべきではないか?

 一瞬の、ジャッキー VS ドニー対決がどうしても見たい! という方にオススメ。

☆☆★★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2003-nov-25;

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