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 Movie Review 2002・10月30日(WED.)

ガイア・ガールズ

 長与千種(女子プロレス界のカリスマらしいです)が主宰するガイア・ジャパン。その練習風景と試合を追ったドキュメンタリー。ドキュメンタリーですが(だからこそ?)、そんじょそこらの劇映画では太刀打ちできない感動のドラマが展開します。

 道場には明日のスターを夢見て入門してくる者が後を絶ちません。しかし、彼ら新入門者は、アッという間に音を上げてしまう。そんな厳しい練習メニューを軽々と、ストイックにこなしているのは練習生・竹内彩夏。しかし、そんな彼女でもデビューのためのプロテストでは、先輩レスラー(レスレス?)にコテンパンにのされてしまうのであった。果たして、竹内彩夏はプロテストに合格し、デビューできるのでしょうか? ババーン!

 ガイア・ジャパンの道場に密着取材したのは、2 人の監督ジャノ・ウィリアムズ/キム・ロンジノットと、録音メリー・ミルトン、という 3 人のイギリス人女性だそうで。これまでも日本を舞台にしたドキュメンタリーを撮っていたそうですが、「女子プロレスを通じた日本論」みたいな小難しい映画ではまったくなく、シンプルで力強いスポ根物語なんですわ。(この映画をネタに「日本論」を展開するのも可能でしょうが。)

 ところで私、「女子プロレス」に限らず「プロレス」というと、「ひょっとしたら八百長?」とか、「シナリオがあるのでは?」と思うておりましたが、そんな邪推を超越したところで彼女たちは闘っているのであった。まず「女子プロレス」とはショウであり、ショウとして成立させねばならない。ショウとして成立させた上でギリギリと命がけの「勝負」が行われているのですね。

「プロ」のレベルに達するには並大抵の努力では無理。プロデビューさせるために竹内彩夏を、先輩レスラーがコテンパンに痛めつけます。「あんた、そんなんでリングに上がったら殺されちゃうよ!」張り手の一つ、ドロップキックの一つひとつに「女子プロとは何か?」を身体で教えようとする愛が浮かび上がる。人生を賭けて同じ道をめざす者同士の深い絆があるからこそ、成立するシゴキであります。「愛のあるシゴキ」がこんなに美しいとは。私は感動の嵐に包まれたのであった。

「何やろ? この人たち。大丈夫か?」と感じていたガイア・ガールズが、どんどん魅力的に見えてくるのも凄いです。殊に、「妙に気さくな人」にしか思えなかった長与千種のカリスマ性を我々(誰?)は目撃するのである。厳しい練習に耐えきれず道場を去る者に、長与千種は言う。「私は、あんたたちを自分の子供だと思ってるんだ。出て行くんなら、『別の世界で頑張れよ』なんて私は言わないよ。絶対言ってやるもんか。『お前なんか勘当だ』、こういうだけなんだよ」。…うーむ。長与千種が発揮する圧倒的な「父性」に私は頭を垂れるのみ。まいりました。ギブアップ。

 根性、努力、友情、夢、ひたむきさ…など、気恥ずかしいモノが描かれますが、やっぱりイギリス人が撮っているからか、対象との距離の取り方が絶妙なんですな。見終わった後、観客は血湧き肉躍っているであろう。「最高の映画」のみが与えてくれる感覚です。バチグンのオススメ。燃えるで。

☆☆☆☆(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Jan-30;

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