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 Movie Review 2002・11月25日(MON.)

ピーピー兄弟

 ぜんじろうと剣太郎セガール扮する兄弟漫才師の物語。場末の漫才師イクオ・タツオはなかばヤケクソで「オ×コー! オ×オ×オ×オ×コー!」と放送禁止用語、というか放送自粛用語を絶叫します。テレヴィプロデューサー香川照之は、コイツら編集次第でブレイクするでと確信、放送自粛用語を「ピー」音で消しまくってオンエアーしたところ、「ピーピー兄弟」と呼ばれ大人気となってしまうのであった。ババーン! …ですが、イクオ・タツオの漫才が、もともとつまらないのはそういう設定ですからいいとしても、映画の中で面白いとされる「ピー」音入りの漫才もさっぱり面白くないのはいかがなものか。

 この映画には、つまらないものを編集操作によって、さも面白く見せてしまうテレヴィの虚構を告発する狙いがある、と思うのですけど、ぜんじろうと剣太郎セガールによる漫才が、演技の域を脱しておらず、結局この映画もつまらないものを編集によって面白いと見せようとしているのであった。というか、藤田芳康監督は CM 演出出身だそうですが、「漫才」というか「芸人」というものがよくわかっていないのではないでしょうか? …って偉そうに、何様のつもりでしょうか私は。

 イクオ・タツオの漫才のネタは、弟・剣太郎セガールがナンパした女性をコマし、兄・ぜんじろうがそれを覗き見て書き下ろす実録エロ漫才なんですけど、ある嵐の夜のベランダで、いつものように兄が弟の部屋を覗くと、今まさにコマされんとす女性は、兄のステディであった! ガーン。兄・ぜんじろうは持っていたペンをポトリと落とす…って、紋切り型の表現に思わず爆笑してしまったのですが、それはいいとしてそれから兄弟の対立が激しくなって、漫才もボロボロになる。これではダメではないか。ここで兄は「こりゃメチャクチャおいしいネタになるでぇ!」と奮起せねばならない。漫才師の魂(SOUL)とは、そういうものだと思うのです。…って何様のつもりでしょうかね私は。

 結局、「ほんまもんの漫才」「ほんまもんの芸人」を描き得ず、「テレヴィは偽物」とメディア批判したつもりが不発に終わって、兄弟の愛憎物語に着地点を見出し、アナーキーな不条理に到達できるネタなのに人情話に仕上がってしまいました。というわけで、ご家族そろってのご鑑賞にオススメです。

☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Nov-25;

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