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 Movie Review 2002・12月21日(SAT.)

クライム &
ダイアモンド

 ホテルの一室、クリスチャン・スレーターはティム・アレンに突如、銃を突きつけられる。ティム・アレンは「毒舌ジム(Critical Jim)」と呼ばれる殺し屋です。ティム・アレンは言います。「90 分間でお前の物語を語りやがれ。面白ければ、その分寿命が延びる」。クリスチャン・スレーターは語り始める。「宝石強盗事件があって、刑務所脱獄があって、女がいて…」。果たしてクリスチャン・スレーターは、寿命を延ばすことができるのでしょうか? ババーン!

 監督は新人クリス・バー・ヴェル。書き上げた脚本がバチグンの面白さだったので、実績があまりないにもかかわらず、クリスチャン・スレーター、ティム・アレン、リチャード・ドレイファスなどビッグネームが出演を快諾して(知らん)のデビュー作となりました。

 毒舌ジムがなぜに語らせるかというと、彼はムーヴィー・ゴーアー(Movie Goer)なんですけど、少しヒマがあるからといって映画に行くわけにもいかないので、何か面白い話を聞かせろ、ということで。彼は言います。「最近の映画はクソだ。ドカンと爆発してそれで終わり。昔の映画はいいぞ。爆発のあとに、必ず第三幕がある」…との言葉どおり、この『クライム & ダイアモンド』もクラシックの再生をめざします。テンポもよろしくちょっとした拾い物なり。語り口も古典的。

 名作映画に関する言及が散りばめられております。『脱出』『大脱走』『特攻大戦略』『天国から来たチャンピオン』…などなど。なかなかセンスのいいセレクションですねー。対してゴダールの『ウイークエンド』はどうでしょう。『大砂塵』『戦艦ポチョムキン』…ん? ちょっと痛いですよね。映画で名作映画に言及されると「監督さん(または脚本家)って、映画好きなんですねー」と白けてしまう場合が多いのですが、この『クライム & ダイアモンド』は、「映画好き」のセレクションというより「ムーヴィー・ゴーアー」(ボンクラ度高し)のセレクションです。ってよくわかりません。

「映画好き」と「ムーヴィー・ゴーアー」はどこが違うのでしょうか? 「映画好き」とは「映画が好きな人」のこと(当たり前)。対して「ムーヴィー・ゴーアー」は、映画を憎んでいる場合もある。ただ単に、なぜか足繁く映画館に通ってしまう人のことを指します。「ムーヴィー・ゴーアー」は、「映画が好き」「映画を愛している」などとは決して言わないのである。そこんとこよろしく。

 そんなことより毒舌ジムのキャラが『ゲット・ショーティ』のトラボルタとかぶっていたり、なんかタランティーノっぽいな、とか、ああ、つまり『ゲット・ショーティ』『ジャッキー・ブラウン』の原作者・エルモア・レナードのタッチなのですな。なるほど。

 そんなことはどうでもよくて、ストーリーやセリフ、登場するキャラクターが面白いですし、上映時間 90 分程度にまとめたのもグーなのですが、宝石強盗シーンが痛かったり、音楽が致命的なまでにもっさかったり、ヒロイン役のポーシャ・デ・ロッシが可愛くなかったり、ラストシーンは「映画好き」が喜びそうでやっぱり痛い…と、色々文句はありますけれどね、クリスチャン・スレーター、ティム・アレンがいい感じですのでオススメです。

 …というか、伝書鳩は、鳩の帰巣本能を利用するわけですから、往復便には使えないのでは? とか、マックィーンがオートバイでかっ飛ばすシーンに『大脱走マーチ』が流れるのはいかがなものか?…とツッコミを入れて、新人監督クリス・バー・ヴェルの次回作(もしあれば)に期待しましょう。

☆☆☆★(☆= 20 点・★= 5 点)

BABA Original: 2002-Dec-21;

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