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Movie Review 5月11日(FRI.)

タイタンズを
 忘れない

 1971 年、ヴァージニア州。人種差別解消のために、黒人と白人に分離していた高校が合併することになります。アメリカン・フットボールチーム「タイタンズ」も他校に先駆けて人種混合となり、ヘッド・コーチには黒人デンゼル・ワシントンが就任。当初は反発し合っていた黒人と白人ですが、やがて…と、皆さんのご想像と寸分違わぬ物語が展開します。

「実話に基づく」とのことですが、アメリカ映画の「実話に基づく」ほど信用のならないものはないので、ひょっとしたら「ヴァージニア州にタイタンズというフットボールチームがあった。」…くらいの実話度かも知れません。

 黒人と白人が仲良くなっていく理由は、意外にも、途轍もなくドライなものです。まず黒人+白人の混合チームは軍隊式の過酷な合宿生活に叩き込まれ、試練を乗り越えるために仲良くせざるを得ない状況に追い込まれるわけですね。互いの人となりや思想・感情に触れた後に芽生えた友情、とは違うのです。

 合宿で洗脳され、チームはすっかり仲良くなったのですが、学校へ戻れば他の白人の冷たい視線にさらされます。しかしチームが州大会を勝ち進んでいくと…すっかり街の人たちは黒人好きになっちゃうんですね。すなわち「結果がすべて」です。黒人が白人に認められるには、白人様と仲良くし、白人も喜ぶような成果をあげねばならないようです。なんとも愉快な映画ですね。

 日本語題では「忘れない」ですが、原題は“Remember the Titans”ですから「タイタンズを忘れるな」です。つまり、現代のアメリカ白人に向かって「かつて我々は黒人と協力して勝利した経験を持っているではないか」と訴えているわけです。

 この映画の製作者ジェリー・ブラッカイマー作品には『パールハーバー』が控えています。「リメンバー・ザ・タイタンズ」、そして「リメンバー・パールハーバー」!

 そう、この映画は日本をコテンパンに叩きのめすために、アメリカ国内の黒人・白人の結束を呼びかけるプロパガンダ映画なのです。シュガー・コーティングされた友情物語の裏にこのような意図があるとは、日本では私以外の者は全く気づいていないが、世界では常識なのである。よく知りませんが。

 人種の対立を象徴するのにポップ・ミュージックが使われています。黒人はもちろんアイク & ティナ・ターナーなどのソウルなんですが、白人はロックンロールです。しかし、ロックンロールは黒人のリズム %7E ブルースから生まれたものですから、ロックで黒人に対抗できるわけがないのですね。アメリカ白人の、物事の歴史に対する無頓着さを見事に表現しているのではないでしょうか。

 お手軽に感動するなら、やっぱりアメリカ映画がいちばん! ですね。「頭のいい黒人役ならオレにまかせとけ!」とデンゼル・ワシントン節も炸裂、ひとつアメリカ南部の田舎者にでもなった気分でお楽しみください。オススメ。

BABA Original: 2001-May-11;

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